無修正エロ動画の“無法地帯”と化していたFC2。本社がアメリカにあり、謎に包まれた会社ゆえ、手出し困難だったが、とうとう警察が本気で動きだした!

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日本を中心に会員数約2000万人以上を誇るFC2。ブログや動画共有サービスで有名だが、“無修正エロ動画サイト”という認識の人が多いだろう。日本人をメインターゲットとしたサービス展開をしながらも、アメリカ・ネバダ州に本社を置く“海外企業”であるため、警察側も今まで思うように捜査に踏み切れずにいた。

だが、今年6月、事態が動く。

6月3日、『FC2ライブ』で無修正の性行為動画を配信したとして、“帽子君”と名乗る大阪市北区の30歳男性を「公然わいせつ罪」の容疑で京都府警が現行犯逮捕。同サイトは動画ライブ配信の視聴料の一部を投稿者が得られる仕組みだったが、この“帽子君”は3000万円以上も荒稼ぎしていたという。

この逮捕劇をきっかけに、京都府警などは9月30日、表向きはFC2の広告代理店で、同社の日本向けサービスを開発していた、大阪市北区にある会社、ホームページシステムに「公然わいせつの罪」(刑法174条)の幇助(ほうじょ)の容疑で家宅捜索を敢行。

その理由を京都府警サイバー犯罪対策課の担当者が説明する。

「ホームページシステムはFC2とは完全に別会社であると主張していましたが、ネバダ州のFC2はある種のダミー会社で、同社が実質的な運営元ではないかという観点からの家宅捜索です。現段階では6月に検挙した容疑者の配信との関連性をはっきりさせ、視聴者から投稿者までの金銭の流れを明確化するために調べを進めています」

広域にまたがるネット事件の場合、今回のように管轄を超えて合同捜査する場合もあるそうだが、いずれにしても警察としては、ようやくFC2の尻尾をつかめたというところか。

FC2本社へ捜査のメスが入らない理由

ところが今回、FC2本社へ捜査のメスは入れられていない。なぜか?

昨年2月、『FC2ブログ』で名誉毀損(きそん)行為を行なったユーザーの、発信者情報開示の仮処分命令を発令させた実績がある最所(さいしょ)義一弁護士に話を聞いた。

「FC2を『わいせつ物頒布等の罪』(刑法175条)の幇助として立証するには、とにかく本社のサーバーを差し押さえる必要があります。国際司法共助として現地警察に協力を要請することもできますが、ネバダ州は外国企業を含め、税金面で優遇するなど企業誘致を行なっています。なので、日本警察の捜査への協力に消極的な態度を取る可能性も高く、捜査に踏み切れなかったんだと思います」

とはいえ、今回のホームページシステムへの捜査は、違法配信により、簡単に多額の違法な収益を得られるため、暴力団などが活動資金稼ぎに利用する恐れなどもあり、さすがに黙って見過ごすことができなくなった、というのが実情のようだ。

「ちなみに、過去の類似事件の多くは『わいせつ物頒布等の罪』の幇助を適用しているのですが、ホームページシステムへはあえてそれよりも罪の軽い『公然わいせつの罪』の幇助で捜査しています。これはおそらく、『公然わいせつの罪』の幇助ならばFC2本社のサーバーを差し押さえる必要がなかったためでしょう」(最所氏)

まずは手堅くホームページシステムの罪を立証したかったということか。だがFC2側がまた別の“法の抜け道”を講じて、いたちごっこになるのでは?

「いえ、今回の警察の対応はイエローカード的な意味合いが強いですが、一企業が国家権力とまともにやり合って勝てるわけはないので、FC2は近い将来、運営方法を見直さざるを得なくなるはずです」(最所氏)

この両者のバトル、どうやらFC2が白旗一歩手前のようだ。

(取材・文/昌谷大介、東賢志[A4studio])

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