プール脇の金網下のコンクリートは3100cpmを記録。一方、除染されていると思われるすぐ横の路面は503cpmと6分の1に プール脇の金網下のコンクリートは3100cpmを記録。一方、除染されていると思われるすぐ横の路面は503cpmと6分の1に

福島県の新知事に、前副知事の内堀雅雄氏が決まった。だが、政策は佐藤雄平知事路線を引き継ぐとあって、福島の放射能汚染対策に大きな変化は期待できない。

そんななか、本誌がこの夏にリポートした福島市の小中学校プール周りではとんでもない事態が進行していることがわかった(※1)。プール周辺が福島第一原発並みに汚染されている可能性があるのだ。

(※1 http://wpb.shueisha.co.jp/2014/07/31/33360/

■前回の本誌記事に教育委員会が難クセつけてきた

『週刊プレイボーイ』本誌では8月11日号で福島市内の小中学校プールの放射能汚染問題を取り上げた。

福島市では原発事故翌年の2012年から小中学校のプール授業を再開。事前に除染を行ない空間線量は下げたものの、その後、プールサイドのコンクリート表面などが放射線管理区域並みに汚染されていることが発覚したのだ。しかし、表面汚染は文部科学省が定めた学校内の除染基準に含まれていないということで、福島市教育委員会は大した対策をとらないまま今夏もプール授業を行なった。

そこで週プレでは現場取材と併せて福島市の教育委員会を直撃し、その弁明と汚染の現状を詳しくリポート。すると掲載後、市教委の教育部長から本誌宛てに、記事の訂正を求める抗議文(申し入れ)が届いた。

そこには「記事には事実誤認があり、風評被害を含めた大きな影響をもたらし、さらには被災地の復興を阻害する」などと書かれていた。市教委は一体、どんな抗議をしてきたのか? 一例を挙げると、

「水道水の管理目標が、10ベクレル/kgなのに対して、その60倍の汚染(注:600ベクレル/kg)がプール水で確認された学校は2校」

記事中でこのように表現した部分がある。これは市の調査結果に基づいて書いたものだが、市教委はこう言ってきた。

「当時の飲料水のセシウムの暫定基準値は200ベクレル/kgであり(中略)現在の基準(注:10ベクレル/kg)に基づいて評価することは適正ではなく、『60倍の汚染』といたずらに危険性を煽(あお)る内容であり不適切です」

要は、600ベクレル/kgという数値を記録した汚染されたプール水に対して、「60倍というのは煽りすぎ。当時の基準は200ベクレルだったのだから汚染度合いは3倍と言うべき」とクレームをつけてきたのだ。

600ベクレル/kgという事実は否定しなかったので、プール水が汚染されていたことは市教委も認めている。つまり、彼らにとって大事なのは、600ベクレル/kgの水が絶対的に危険かどうかよりも、当時の基準値に照らし合わせて対応したので問題ない、ということらしい。

福島第一原発内にある免震重要棟前より危険!

さらに、市教委が学校内の除染指針としている文科省の通知は、現在は環境省が打ち出した、より厳しい目安に変わっていると書いた部分にも「文科省にあらためて確認したが、通知のとおりだといっている」とクレームをつけてきた。

そこで、市教委の本田博進・学校保健給食課係長に文科省の誰に聞いたのかを尋ねたところ、答えられなかった。係長自らが電話で確認したのに「相手の名前の控えはとっていない」というのである(ちなみに本誌の指摘は文科省学校教育健康課の伊藤拓氏に再度取材し、「文科省の通知は撤回してないが、実態として環境省が示したより安全な毎時0.23μSv(マイクロシーベルト)の基準で学校内でも除染が行なわれている」ことを確認した)。

結局、事実誤認はないにもかかわらず、表現が煽りすぎだから訂正しろと言われたのだ。となると、そのまま黙っているわけにはいかない。そこで本誌は9月上旬、福島市の学校プール汚染を前回より高精度な測定器を使って再調査した。すると、前回調査よりも深刻な表面汚染に見舞われていることが判明した。

■渡利中学校プール脇でイチエフ内の施設より高い数値!

学校のプール施設へ入る許可は市教委から得られなかったため、プールサイドに最も近い場所を探して測定した。すると、すべての場所で前回調査よりも高い数値が出た。

最も放射性物質で汚染されていたのは、市内中央部の渡利(わたり)中学校。プールサイドから約5m離れた学校敷地外のコンクリート上で3100cpmを記録した。地上1mで記録したバックグラウンド値(周辺空間値)の315cpmと比べて10倍も高い。また、同じ場所の空間線量は毎時1.03μSvを記録した。

これはどの程度の汚染度なのか?

東京電力が昨年8月に、福島第一原発内にある免震重要棟前の表面汚染を測定したデータがある。それを見ると、入り口前の鉄塔(支柱)側面12ヵ所の最高値は3070cpmだ。つまり、原発事故が起きた現場敷地内より福島市の学校プール脇のほうが汚染されているのだ!

3000cpmは計3ヵ所も!

 いくらプールの水を入れ替えてもプールサイドのコンクリートが汚染されているため、そこを裸足で歩けば被曝する いくらプールの水を入れ替えてもプールサイドのコンクリートが汚染されているため、そこを裸足で歩けば被曝する

第一原発に出入りする作業員は18歳以上に限られ、現場はきちんとした放射線測定に基づき被曝(ひばく)防護対策が取られている。一方、子供が水着で泳ぐ学校プール周りは表面汚染の測定さえされていない。それなのに管理者の市教委は、文科省の基準に従っているから危険はないと言うのだ。

市内北部にある中野小学校も汚染度が高かった。プールサイドから20mほど離れたコンクリート上にホットスポットがあり、3度測定したがいずれも3000cpmを超えた。

福島市内の小中学校から26校を抽出して測定した結果、3000cpm台が2校、2000cpm台が3校あり、1000cpm以上の合計は12校に上った。ちなみに、放射線管理区域から物などを持ち出せる汚染限度は1000cpm。それ以上は放射能で汚れていると判断され、管理区域内に隔離される。

今回はプール敷地外で測定したデータなので、あくまで参考値にすぎない。だが、それでも12校の学校プールが、本来であれば一般人が立ち入れないほどに汚染されている可能性は十分あると言えるだろう。

■後編は、明日配信予定!

(取材・文・写真/桐島 瞬)