2014年の漢字は「税」じゃなくて「謝」でしょ!と言いたくなるほど、昨年の謝罪会見の豪華絢爛(けんらん)っぷりはすさまじかった。そこで本誌は、佐村河内守氏のゴーストライター問題でその一角を担った新垣隆氏に、数々の謝罪会見について振り返ってもらった。
自身も騒動の渦中にいた新垣氏は、一体どんな思いで彼らの“謝罪”を見ていたのか?
* * *
―ほかの人の謝罪会見、やはり気になりましたか?
新垣 いや、私もそうでしたが、皆さん自分のことで精いっぱいだと思いますね。ただ、図らずも私が口火を切ってしまったというか、トップバッターになってしまった感はあります。
―STAP細胞の小保方(晴子)さんは、かなり入念に準備をして会見に臨んだように見えましたが…。
新垣 ちゃんと見ているわけではないので、何か言うことはできないんですけど、準備はきちんとされたんだと思います。
―新垣さんは、どのような準備を?
新垣 私の場合は『週刊文春』にスクープされたことが発端。文春サイドがどちらかというと私を擁護してくれていたので、いろいろサポートしてくれたんです。私自身は、とにかく謝らなければという一心で、何も考えずにただ真相をそのままお話しするのみでしたが。小保方さんの場合は、会見の時点で騒動も大きかったですし、大変ですよね。自分以上にもっと大変だったと思います。
―“号泣議員”として話題をさらった、野々村(竜太郎)元県議の会見はいかがでしたか?
新垣 …………。んー、わかんないですね。なんなんでしょうね。謝罪にもいろんな手法があるんだなということがわかりましたけど……。この人の心中は全然わからないですね。
―不倫騒動の矢口真里さんもついに復帰しました。
新垣 これ、矢口さんは何について謝罪したんですかね? アイドルという、スキャンダルを起こすべき立場ではなかったのに申し訳なかった、ということなのでしょうか。
―視聴者に対し、世間を騒がせたことをわびたのでしょう。
新垣 実は先日、矢口さんがMCを務める復帰第一弾みたいな番組でご一緒したんですね。私は“今年のお騒がせ人間”のひとりとして呼ばれまして。番組の最後に、矢口さんが「またお会いしましょう」みたいな言葉をのせて歌ったんですけど、私がその場でメロディを作って伴奏をしたんです。
―へー、面白いコラボですね。
新垣 ……ええ。矢口さんはすてきな歌声でした。ただ、「新垣は調子に乗っている」との非難は覚悟しております。
すべての元凶は自分にある
―LINEで中学生ともめた大阪府議はご存じですか?
新垣 ああ、ほんのちょっとしかわからないですね。
―中学生相手に不適切なやりとりがあったと批判され、頭を丸めて謝罪会見に臨んだものの、自分をちゃかしたり中傷したりした人には提訴も辞さない強気な姿勢が目を引きました。
新垣 ああ……まるで誰かさんみたいですね。
―(笑)。新垣さんもあることないこと書かれたのでは?
新垣 確かにいろいろ書かれましたけど、仕方のないことです。真相とは異なる言われ方も散々されましたけど、すべての元凶は自分にありますから、それがどうとらえられようと受け止めるしかありません。
―続いては、“セクハラやじ”で公開謝罪した東京都議です。
新垣 うーん。どちらも政治家の方ですし、責任をもって仕事に当たってくれれば別にそれでいいんじゃないですかね。
―こうして名乗り出るのもそうですが、謝罪会見って勇気がいりますよね。
新垣 もちろんそうなんですけど、もっとも私の場合は先にスクープされてしまい、自分はもうおしまいだと思っていましたから、すべてを告白するしかありませんでした…。
私も人のことを言えないので……
―会見ではありませんが、保釈後に警察署前で頭を下げたASKA被告はどうでしょう?
新垣 ドラッグでハイになればいい音楽が作れる、ということはおそらくまったくないと思うんです。ただ、ビッグアーティストとして何万人ものお客さんを前に歌うことが日常になっている人は、膨大なエネルギーを消費するでしょうから、つい手を伸ばしてしまったのかなと。まずは体を治していただいて。ファンはまたコンビで活躍する姿を望んでいるでしょうから。
―ちなみに、作曲中にインスピレーションがわいてこない時、新垣さんはどうするんですか?
新垣 そういう時は何もしません。
―では話を戻して、小渕優子氏はどうでしょう? 先日の衆院選では再選されたものの、「禊(みそぎ)が済んでいない」との批判も浴びていますが。
新垣 それは私も人のことを言えないので……。こうしてノコノコと出てきて何をやっているんだと言われてしまいそうです。本当にすいません。
―もうひとり、大臣辞任に追い込まれたのが、うちわを自分の選挙区に配っていた松島みどり氏です。宮沢洋一経産相はSMバーへの支出が問題になりました。
新垣 うちわでは辞任に追い込まれて、本人が行ってないとはいえSMバーはセーフというのはなんだか妙ですね。謝罪会見でも、政治家は弁が立つ方が多いですが、世間の人たちは言葉の背後を見ていますから気をつけたほうがいいと思います。
―賞味期限切れの肉を使用していたことが問題で、マクドナルドのカサノバ社長が会見しましたが、遅い謝罪に批判も多かったです。
新垣 大企業ですから、いろいろ調整が大変でしょう……。人のことは言えませんけど、こういう問題はごまかしきれませんから早く謝ったほうがいいです。
日本は優しい社会でよかった?
―ベネッセは、個人情報を流出させてしまったおわびとして500円の金券を配布しました。
新垣 私の場合、佐村河内氏とのCDを買ってくれた人たちに「500円払うからカンベンしてください」で済む話ではないですからね……。
―最近では、ナッツリターン問題で大韓航空の副社長が謝罪しました。
新垣 ああ、そんなことがあったんですか。わざわざ飛行機を空港に折り返させるなんて大問題ですね。写真ではあまりそういうことを言いそうにない人に見えますが……。不満やストレスがたまっていたのかもしれませんが、それにしてもですね。
―韓国ではこういう、つるし上げるような囲み取材が目立ちます。怖いですね。
新垣 もし日本がこういう社会だったら、私もゴーストライターなんて頼まれても、ひょいひょい安請け合いしてなかったでしょうね。バレたときが怖くて。日本は優しい社会でよかったです。……いや、やったことはよくないですけどね。失礼しました、申し訳ございません。
―2014年の謝罪会見、駆け足で振り返ってみていかがでしたか?
新垣 あの、繰り返しになりますが、私にものを言う資格はないと思うんですよ。でも口火を切った人間としてあえて言わせていただくと、どなたも出てこざるを得ない状況になって行なわれている謝罪会見だと感じました。
やはり、謝るタイミングは大事なんじゃないかと思いますね。まあ、私が言えることではないですけどね……。
(構成/友清 哲 撮影/村上庄吾)