税金は難しいし、サラリーマンの自分には関係ないかも?と、「確定申告」の文字を見るたびに華麗にスルーしていた皆さんは、実は損をしていた可能性が?
所得税は「オーダーメイド」の注文服のようなもの。その人の収入、使った経費、家族構成などで決まり、個別でバラバラな額になる。これは「能力原則に基づく公平な課税」という考え方がベースにあるから。しかし、サラリーマンでも今の時代、こまめに税金を取り戻すことはできる。
そんな中、週プレがオススメするのは、セコセコと控除額を増やして、払う税金を減らそう(取り戻そう)という作戦。野田美和子先生を臨時の“顧問税理士”に迎えてアドバイスしてもらおう。
■副業が赤字になると節税になる!?
―早速ですが、先生には人が2種類に見えるんですね?
野田 税の世界から見ると、(1)雇用者と雇用契約を結んだ被雇用者(給与所得者。いわゆるサラリーマン、正社員、契約社員、アルバイト)。(2)仕事は請負契約でする個人事業主(自営業やフリーランスの請負の仕事)。このふたつに大きく分けられるんです。
例えば、タクシーの運転手さん。去年まではタクシー会社に勤務していて「給与所得者」だったけれど、今年から個人タクシーをやるようになったなら「個人事業主」です。
―似たような仕事なのに?
野田 はい。税務上は別扱いになります。
―自営業者はベンツを買っても経費にできたりするのに、サラリーマンは軽自動車で毎日会社に通っても経費にできません。なぜですか?
野田 実は、サラリーマンは給与所得控除という形で、領収書がなくても最初から経費が認められているんです。これは税金を低めに抑えられているということ。それに比べると、個人事業主は無条件に控除されるのが、納税者すべてに認められる基礎控除の38万円(年間最低生活費の免税)だけです。私は、給与所得者のほうが税制上、恵まれていると思います。
特定支出控除にチャレンジするべき
―個人事業主は経費の申告をして自分の税額が決まりますが、給与所得者=サラリーマンは天引きされるので、自分が何か手続きをして税額が決まる実感がありません。そんなサラリーマンの一番の節税方法は?
野田 給与所得者の人は年収が給与所得だけだと節税は難しいです。理論上、一番、節税になるのは、本業とは別に事業をしていて、そこで赤字が出ること。一例を挙げると、今は本業の他に自分でネットビジネスをやっている人もいますよね。それが赤字になったケース。こうなると、赤字の部分と給与所得が相殺されて損益通算され、所得税が減ります。ただし、実体のないビジネスで赤字申告していると、当然ながら罪に問われますけど。
―副業をしない人は、どうすればいいのでしょうか?
野田 特定支出控除にチャレンジすること。会社が出してくれる経費以上に自腹を切っている場合は、確定申告で取り戻せる場合があります。具体的には、(1)通勤費(2)転居費(3)研修費(4)資格取得費(5)帰宅旅費(6)図書費、衣服費、交際接待費(上65万円)が該当項目です。
いずれも職務に必要な出費に限られ、支出額が一定金額以上の場合に適用できるという基準があり、「会社の証明が必要になる」が大前提なので正直、ハードルは高いです。申請者は昨年が約1600人。制度開始初年度の一昨年の適用者が6人だったことを考えれば増えてはいるんですが(笑)。この制度が定着していくといいですね。より使いやすい方向へ改正される可能性も出てきますし。
他には、医療費控除(計10万円超使った場合)、扶養控除などの控除項目(免税項目)をしっかりと見直して、該当する場合はこまめに確定申告することです。
―「週刊プレイボーイ12号」では、読者がわかりやすい「8つのモデル」を立て、野田先生に節税シミュレーションをしていただきました。
野田 「確定申告なんて怖くない」を合言葉に、読者の皆さんが賢く節税できるといいですね!
(取材・文/梅田小太郎 戎小次郎 撮影/下川純一郎)
●野田美和子 税理士。学習院大学文学部卒業。2009年に独立開業し、東京都渋谷区に事務所を開設。幅広いクライアントを持ち、税務・会計・経理のサポートを行なっている。臨時の週プレ顧問税理士
■週刊プレイボーイ12号(3月9日発売)「今すぐ来年の準備開始! セコセコ申告で税金を取り戻せ!」より(本誌では、さらにわかりやすいケーススタディで“初めての節税”を簡単レクチャー!)