今まで一般道で行なわれた速度取り締まり、いわゆるネズミ捕りは何人もの警察官を動員してのちょっと大がかりなものだった。

しかしそれが、警察庁が導入を予定している新型オービスの設置により様変わりする可能性が出てきたーー。

この新型オービスは海外製で小型。これまでスペースの問題で取り締まりが難しかった生活道路でもネズミ捕りを行なえるようになる。

しかし、この導入には疑問点が残る。警察庁に問い合わせたところ(前回記事はこちら→http://wpb.shueisha.co.jp/2015/03/24/45476/)、新型オービスは違反車両を前方から静止画で撮影するようなのだが、それで本当にちゃんと取り締まることができるのか不透明なのだ。

交通取り締まりの事情に詳しい今井亮一氏が指摘する。

「撮影が静止画だけということは、測定値の信頼性は絶対であるという表れなのでしょう。ですが、それを担保する専門家とは結局、測定器メーカーの社員なのです。最近は運転者もドライブレコーダーの装着などで証拠を持っていますから、裁判になった場合はどうなるのか。

また、二輪車を取り締まる際、前方からではナンバープレートが写りません。従来からあるオービスの弱点をどう克服するのかも、この回答からではわかりませんね」

なのに「二輪車を取り締まり対象から外すことは考えていない」と警察庁は言う。そこで今井氏は、こんなシナリオを予測する。

「二輪車はヘルメットで違反者の顔がわからない。なのに新型オービスの取り締まり対象から外さないということは、バイクの持ち主(使用者)の責任を問う形が視野にあると考えられるのです。警察は現時点では考えていないと言っていますが、今後はどうなるかわかりません。

試行運用の取りまとめ結果では『二輪車の違反者責任を問うことには無理がある』と発表し、その後、識者の意見を募る形を取りながら使用者責任を持ち出してくるのではないでしょうか」

地方はオイシくない駐車放置違反金

となると、警察庁は「違反車両を前方から撮影する」と回答を寄越したが、バイクに関しては後方からナンバーを撮影するのかもしれない。

また、今井氏が速度取り締まりにも駐車違反と同様に「使用者責任」を取り入れると予想する背景には、警察の財源確保問題がある。

以前は、軽い道路交通法違反でドライバーが払った「反則金」は国庫の特別会計に計上された。このお金は警察予算として比較的自由に使うことができ、これが警察利権の温床と見られてきた。

ところが民主党政権が行なった事業仕分けで「反則金」の会計上の仕組みが変更され、2010年には予算の使い道が厳しくチェックされる一般会計に統合されてしまった。このため、「使いやすい」予算を失った警察は自分たちの裁量で動かせる「違反金」という制度を速度違反にも適用するのではないか、というのが今井氏の見立てである。

現に、2006年から導入された駐車違反車両への「放置違反金」は地方財源に組み込まれ、都道府県警察にとって魅力的な財源となっている。だが、駐車違反金は大都市では“稼ぎ”が大きいが、駐車スペースに余裕のある地方ではそれほどの財源になっていない。

そこで警察が目をつけたのが速度違反。交通量の少ない地方都市ではスピードが出やすく、駐車違反の少ない土地でも違反が取り締まれる。つまり速度違反を違反金扱いにしてしまえば、地方警察の財源も潤(うるお)うというわけだ。

以上はあくまでも予測だが、警察庁の回答からは、そういうことも考えられるのだ。

ともあれ、交通取り締まりの本来の目的は交通事故防止。警察の皆さん、そこのところよろしくお願いしますね。

(取材/桐島 瞬)