液体をぶっかけるという奇妙な犯罪が多発している。例えば、こんなケースーー。

群馬県高崎市で女性会社員(23歳)が硫酸をかけられ、やけどを負うという事件が起きたのは4月2日のこと。

逮捕されたのは無職の北村宣晃(のりあき)容疑者(30歳)。市内のショッピングセンターで買い物をしていた女性めがけて硫酸を浴びせかけ、左くるぶしに軽いやけどを負わせた。

3月31日から4月6日にかけ、同県内では同じような硫酸ぶっかけ事件が5件も起きており、群馬県警では北村容疑者に余罪があると見て、厳しく追及しているという。

液体ぶっかけの定番といえば、唾と精液だろう。前者は大阪府熊取町の路上で3月17日、10代女性が19歳男子大学生から唾を吐きかけられるという被害が発生している。

精液についても4月8日、東京都江戸川区の契約社員、福田哲也容疑者(40歳)がJR総武線の車内で女子高校生(18歳)のスカートに自分の体液をかけたとして、器物損壊の疑いで逮捕されるというニュースが流れたばかりだ。

なぜ、彼らは“液体ぶっかけ犯罪”をしでかしたのか? 精神科医の和田秀樹氏に聞いた。

「相手にモノをかける行為は、支配欲・征服欲の表れと見ることができます。犯人は液体をかけて、相手を汚すことで勝ったと考えたいのでは? 特に、硫酸事件で被害女性5人のうち4人が黒ストッキングだったことは注目です。黒ストッキングは強い女性のシンボルと感じていた可能性がありますね。犯人はそれを征服したいと考えたのかもしれません」

人間以外に液体をかける人の心理

確かに、ケンカで相手に唾を吐きかけ勝ち誇るというのは昔からよくある光景だ。精液についても、

「AV定番の顔面シャワー。あれは女性の顔に精液をかけて、男がカタルシスを得る行為。以前なら、男はセックスするだけで女性を支配した気持ちになれましたが、今は女性がセックスを楽しむ時代。女性に喜ばれては支配感に浸れず、顔面シャワーが生まれた。精液をかけるのは顔面シャワーと同じ行為です」(和田氏)

なるほど、納得だ。でも、このケースはどうなのか?

4月に入り、奈良、京都、静岡など7府県で寺社建造物に何者かが油をかけるという事件が30件も起きている。こちらは人間相手でなく、建物。液体をぶっかけても征服欲は満たされないと思うが…。

「昔から、神聖なものに小便をかけたがる人っていますよね。あれは権威のあるものを汚すことで満足を得ているんです。寺社の貴重な建造物に油をかけることもそれと同じで、やはり権威を汚す行為なのです。犯人にとっては、油は小便の延長なのでしょう」(和田氏)

なるほど、寺社への油ぶっかけ犯もやはり支配欲・征服欲を満たそうとしているというわけか。

何かに支配されていると感じる人ほど征服願望を抱くもの。格差社会の日本では、ますます液体ぶっかけ犯罪は増えていくのかもしれない。