フィリピンで1万2千人以上の女性を買春し、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の容疑で逮捕された、横浜市の中学元校長、高島雄平容疑者(64歳)。教職者による衝撃の犯罪に驚いた人も多いだろう。
一体なぜ、彼はこれほどの数の女性を「買って」しまったのか。フィリピンを拠点に活動する「開高健ノンフィクション賞」受賞作家、水谷竹秀氏が現地で取材した。
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高島容疑者は1988年から3年間、マニラ日本人学校中学部で理科の教員をしていた。その期間に高島容疑者の教え子だったという卒業生の男性(38歳)は、彼の逮捕を聞いて絶句した。
「こんな事件に関わるような人物像とはまるっきり違いました。僕は化学が苦手だったんで、先生に何度か質問にいきましたが、すごく親身になって教えてくれた。帰任する時には泣いた記憶もあります」
この卒業生によると、高島容疑者は当時、中学部の学年主任的な立場。テニスクラブのコーチで時々「もっと走れ!」と叱咤(しった)することもあったが、愛情が感じられる指導だった。
学校では小学部に上がる前ぐらいの年齢の息子の姿も見たことがあるという。
「愛妻弁当のようなハンカチに包まれた弁当箱を持っていました。だから奧さんも一緒に住んでいたと思います。学校のフィリピン人スタッフとのスポーツ交流会にも積極的に参加し、夜はスタッフたちと食事によく行っていたので、平日夜は女のコに手を出す時間はなかったと…」
夜に相当出歩いているという噂
高島容疑者はタガログ語の勉強も熱心にやり、フィリピン人スタッフたちとも普通に会話できるレベルで評判も良かったという。
「先生は人懐っこく、いつも笑っていて柔らかい印象です。当時は髪の毛が長く、くるくるパーマでした。フィリピンに溶け込んでいて、こういう日本人が増えればフィリピンのイメージはもっと良くなると思っていたんですけど…」
しかし、今回の事件はこの卒業生の期待を裏切る形になってしまった。彼は首をかしげる。
「ニュースを聞いて残念とかショックとかいう前に、何が原因でこういうことになったのか。先生をイヤな目で見るんではなく、もしお会いできるんであればどうしたのか話を聞きたい」
一方、ある関係者はこう説明する。
「高島先生は夜に相当出歩いている、という噂は当時からありました。でも生徒には人気があり、教育面ではしっかりしていた。だから校長先生になれたんじゃないですか? コインの表と裏ですよ」
生徒の前では「教育熱心な先生」、しかし夜の帳(とばり)が降りると、もうひとりの姿が本性を現すーー。そんな高島容疑者の二面性が色濃く浮かび上がる。
(取材・文・撮影/水谷竹秀)
●水谷竹秀(みずたに・たけひで) 1975年生まれ、三重県出身。上智大学外国語学部英語学科卒業。ウエディング写真専門のカメラマンや新聞記者を経て、ノンフィクションライターとしてフィリピンを拠点に活動中。2011年、『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞