4月21日、東京・渋谷にアメリカ発のファストフードチェーン「タコベル」の日本第1号店がオープン。当日は午前10時の開店前から約200人の客が行列をつくる盛況ぶりを見せた。
全米を中心に世界で6千店舗以上を展開しているタコベルのメインメニューはタコス、ブリトーといったメキシカンフード。日本には1980年代後半に一度上陸したものの当時は受け入れられず、90年代前半に撤退していた。
それだけに今回の再進出に当たっては周到に戦略を練ったようで、メキシコ料理になじみの薄い日本の消費者に合わせ、アメリカよりかなり商品数を絞り込み、その上で日本人の嗜好に合わせたメニューも加えている。
気になる値段だが、2個のタコスにサイドメニュー(メキシカンナチョチップかメキシカンポテト)とドリンクがついたセットの「2タコス スプリーム」が790円、具をトルティーヤ生地に包んでグリルした「クランチラップ スプリーム」セットが850円、日本限定の「シュリンプ&アボカドブリトー」セットが850円、同じく日本限定の「タコライス」セットが790円といった具合。
若者をターゲットにしたファストフード店としては、なかなか強気の価格設定となっている。
2020年の東京五輪を見据え、日本のファストフード業界に殴り込みをかけようとしているのは、このタコベルだけではない。今年秋に「カールス・ジュニア」、来年中には「シェイク・シャック」とふたつのハンバーガーチェーンが新たにアメリカから上陸してくる。
一方で、かつての“絶対王者”マクドナルドは現在、経営不振の真っただ中。つまり、今年から来年にかけてアメリカから“黒船”チェーンが続々と日本に参入し“ポスト・マクドナルド時代”の新たなファストフード戦争の火ぶたが切られようとしているのだ。
タコベルに続いて上陸を控える2チェーン
まずはタコベルに続いて上陸を控える2チェーンのプロフィールを紹介しよう。
カールス・ジュニアの特徴について、フードアナリストの重盛高雄氏が語る。
「実はタコベル同様、カールス・ジュニアも89年に一度、日本進出を果たしていますが、わずか8年で撤退しています。ここの売りはなんといってもアメリカらしいボリューム。グリルで直火焼きしたアンガスビーフを100%使用したパティ(肉)や野菜などがどーんと重ねられています。
その分、値段も張り、約227gのパティを使った看板メニュー『ハーフパウンド・オリジナル・シックスダラー・シックバーガー』は5ドル59セント(約670円)です」
対するシェイク・シャックはどうか。『ザ・バーガーマップ東京』の著書があるハンバーガー評論家の松原好秀氏が言う。
「ニューヨークの高級レストラングループの創業者が市内の公園に出したホットドッグ屋台、それがシェイク・シャックのルーツです。上質な味はもちろん、素材へのこだわりや安全性、さらにマニュアルにとらわれないフレンドリーな接客が評判で、現地では行列ができるほどの人気店です。
看板メニュー『シャックバーガー』が5ドル19セント(約622円)と、こちらも価格帯は高め。オリジナルのワインやビールも置いていて一般的なハンバーガーチェーンよりも大人向けで高級志向な店です」
近年のマクドナルドはかつての100円バーガーのような“安さ追求”よりも、大人も満足できるハンバーガーを目指して新メニューを次々と投下してきた。しかし、より本格的なハンバーガーを売りにする“黒船”がやってくることで、その方針すら変える必要が出てくるかもしれない。
このまま、マクドナルドは衰退していくのだろうか…。
(撮影/五十嵐和博)
■週刊プレイボーイ19・20合併号(4月27日発売)「“ポスト・マクドナルド時代” のファストフード大戦争!」より(本誌では、さらに黒船襲来の激震をリポート!)