４月２１日に上陸したメキシカンフードチェーンの『タコベル」
４月２１日に上陸したメキシカンフードチェーンの『タコベル」を筆頭に、これから来年にかけて「カールス・ジュニア」、「シェイク・シャック」（ともにハンバーガーチェーン）とアメリカのファストフードチェーンが続々と日本進出をする予定だ。
しかし、王者マクドナルドに元気がないとはいえ、モスバーガーやＫＦＣなど数多くのファストフードがしのぎをけずる日本市場で、これらの“黒船”に勝ち目はあるのか？
「昔より認知度が上がったものの、まだまだ日本人にとってタコス（タコベルの主力商品）は身近な存在とはいえません。また、ぽろぽろこぼれる食べにくさや、野菜が多そうに見えて意外と栄養バランスが悪いこともネックとなります。ブリトーなどの“包みもの”系ならまだ受け入れられるかもしれませんが、それもあくまでスナックとして。一部の欧米系外国人は通うでしょうが、タコベルが日本で定着するのはちょっと難しいのでは」
そう分析するのは、フードアナリストの重盛高雄氏だ。しかし逆に、「カールス・ジュニア」、「シェイク・シャック」の高価格帯ハンバーガーには望みがあるようだ。
「景気の回復により、今の日本の消費者は本当にいいものであれば、少し値の張るものにでも対価を支払うようになっています。さらに近年、首都圏を中心に１個１０００円を超えるハンバーガーを出す独立系の専門店が増えていて、プレミアムバーガーというジャンルを確立しつつあります。そうした下地があるので、アメリカ本国でのボリューム、味、サービス、経営方針を日本にも持ち込めれば一定の支持を得られる可能性はあるでしょうね」（重盛氏）
そこでひとつ、懸念材料が…。
「アメリカ人が好む、固くドライな食感で、赤身中心のビーフ臭が濃いパティは、日本では一部のマニア以外、敬遠される傾向にあります。本場らしさを残しつつ、我々の好みといかに折り合いをつけられるかがカギになるかもしれません」（重盛氏）
アメリカから来て日本仕様では意味が無い
一方、『ザ・バーガーマップ東京』の著書がある、ハンバーガー評論家の松原好秀氏の意見は異なる。
「私は、まったく手を加える必要はないと思うんです。アメリカからやって来る高価格な店に対し、日本人だってアメリカ的な味を期待するはず。それが日本仕様に調整されてしまったのでは、わざわざ客が足を運ぶ意味がなくなり、他チェーンとの差別化もできません」
むしろ重要なのは、日本での運営を担当するパートナー企業の本気度だという。
「第１号店のオープン時には物珍しさもあり、とりあえずのぞいておこうかと、遠くからでも続々と人が訪れるものです。そうした一見客を冷やかしだけに終わらせず、リピーターにするには、彼らの生活圏にどんどん出店し、受け皿をつくっていかねばなりません。いつまでも限られた店だけで様子を見るのではなく、積極的に資本投下し、スピード感を持って各地に店舗を増やしていけるかが新参チェーンの成否を分けるのではないでしょうか」（松原氏）
では、仮にカールス・ジュニアやシェイク・シャックが日本の消費者に歓迎された場合、その影響をもろに受けそうな既存チェーンはどこなのだろう？
「価格帯、メニュー構成、イメージなどが重なるバーガーキング、ウェンディーズは真っ向勝負を強いられるでしょうね。そこで独自色を打ち出せなければ、かなり追い込まれそうです」（松原氏）
そして、ひょっとすると……。
「迷走中のマクドナルドが『これからは高級路線だ』と、かつての『１０００円バーガー』のようなピント外れの新メニューを投入してくるかもしれませんよ」（重盛氏）
それはそれで、見てみたい気がするが…生き残りの最終決戦はそこなのか！？
（撮影／五十嵐和博）