5月病真っ盛りのこの時期、日々の仕事にうんざりしている人も多いだろう。新社会人の中には初めての研修や仕事がキツかったり、上司が理不尽だったりで、すでに辞めたくなっている人もいるかもしれない。
しかし、広い世界を見渡せば、もっともっとブラックな、想像を絶するような研修やシゴキを受けている人たちがいる――そう、各国軍隊の新兵たちだ。
新社会人になればグータラな学生生活よりは体力も必要だが、軍人に要求される体力はそれと比べ物にならない!
走り込みや腕立て伏せ、腹筋、背筋などの基礎トレーニングは、当たり前のように死ぬほどやらされる。
例えば、オサマ・ビンラディン殺害作戦で知られる米海軍特殊部隊「SEALs(シールズ)」の場合、訓練期間中はひとりがわずかなミスをすれば、その場の全員が腕立て伏せ。その回数は一日1500回に及ぶことも珍しくない。
中国人民解放軍の海軍陸戦隊もすごい。各国軍の訓練事情に詳しい軍事カメラマンの笹川英夫氏はこう語る。
「彼らは3ヵ月間の新兵訓練の間、毎日500回の腕立て伏せ、腹筋、スクワットに加え、完全武装状態での5キロ遠泳(2時間半以内)、5キロ走(23分以内)を課せられる。やっと正式隊員となった後も、一日12時間に及ぶ過酷な訓練がある上、月に一度のフィジカルテストに合格しないとすぐに格下げ。それどころか、訓練中に足をくじいただけで“隊員失格”の烙印を押されてしまうそうです」
“戦争のプロ”の作り方は苛酷すぎる!
また、ブラック企業では早朝から終電までひたすら働かされるが、新兵はそれどころか夜中も休めない!
フィンランド国境警備隊では、ゲリラ兵育成のためのサバイバル訓練がある。水も食料も持たず、ほとんど人のいない原野で丸2日間、一定の任務をこなしながらさまよい歩くのだ。食事はどうするかというと、釣り道具を自作して魚を捕ったり、野イチゴやキノコを採って食べるという。知識不足で毒キノコに手を出したらアウトだ。
ちなみに、日本の陸上自衛隊のレンジャー課程でも、サバイバル訓練の一環としてヘビの食べ方を教わる。ジャングルや山中ではヘビが重要な栄養源になるため、自衛隊のみならず軍人にとってはポピュラーな食料だという。
イスラエルの対ゲリラ特殊部隊「エゴズ大隊」の若年兵課程では、最後の1週間がまさに地獄。最大30kgの荷物を背負っての80キロ強行軍、格闘技のスパーリング、夜中に負傷兵役の同僚を背負って川を渡る訓練などが、ほとんど睡眠時間を与えられないままひたすら続く。
同じ格闘訓練や川での訓練でも、ひと味違うのがフランス軍特殊部隊「GIGN(ジエイジエン」。鍛え上げられた警察犬と1対1でガチンコ対決したり、75kgの人形を引きずりながら遠泳したり、果ては素潜りでセーヌ川の水底まで潜水し、遊覧船が頭上を通過するまで待機したりする。
少し前までごく普通の生活を送ってきた兄ちゃんたちは、こうして“戦争のプロ”に仕立て上げられていく。心身ともにブラックすぎる彼らの日常を思えば、ツラい仕事だって耐えられるかも?
(取材・文/本誌軍事班[協力/世良光弘、小峯隆生])
■週刊プレイボーイ22号(5月17日発売)「各国軍隊の「新兵訓練(ブートキヤンプ)」がブラックすぎる!」より(本誌では、さらにトンデモない北朝鮮特殊部隊ほかも一挙紹介!)