7月5日、岩手県矢巾(やはば)町で中学2年の村松亮君(13歳)がいじめを苦にして列車に飛び込み、自殺したとみられる問題ーー。

学校側は彼からの度重なるSOSをキャッチすることはおろか、いじめの実態を積極的に把握しようとしていなかったという事実が明らかになりつつある。「加害者」に関する報道がほとんどなされないこともやりきれなさを助長するが…。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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「小学生の時、仲間はずれにされたので死にたくなり、首をつろうと縄跳びを買いに行ったが思い切れず、死なずに一夜明けたら仲間がいつものように接してくれた。あの時、死ななくてよかった」と語った人のことを「そんなことで死のうとするなんて」と嘲笑(ちょうしょう)した人がいました。

私は反論しました。「どんなに幼くても、その時、彼が死にたいくらいつらかった気持ちは決して軽んじてはならない。あなたにとってはばかげたことでも、彼にとって切実な痛みだったのだ」と。

もしも誰かが「しにたい」と言ったら「私にできることはない?」と尋ねてください。たとえ冗談で言ったことでも、「しにたい」という自分の言葉を誰かが真剣に受け止めるのだと知ることは、その人を世界につなぎとめるからです。

まして、いじめは犯罪。誰かが被害を訴えたら、話をそらさずにすぐに駆けつけなくてはならない。「犯罪は絶対に許さない」という姿勢で複数の大人が関わらないと解決できないからです。

彼は率直な言葉で何度も助けを求めたのに本気で動いた大人はいなかった。

加害者は今も教室にいる。本当に、本当にいたたまれないです。