髪をカットすると、オマケに大麻をサービスしてくれる美容室が実在した!

経営する美容室に隠し部屋を造って大麻を栽培し、常連客などに譲り渡していたとして、神戸市垂水(たるみ)区の美容師、森本昌人容疑者(38歳)が大麻取締法違反の容疑で逮捕、送検されたのは7月2日のこと。摘発にあたった近畿厚生局麻薬取締部神戸分室の麻薬取締官が言う。

「森本は地元の神戸では有名な大麻通。我々が大麻犯罪を摘発するたびに必ず名前が浮上する有名人で、当然、以前からマークしていた存在でした。そこで6階建てマンションの最上階にある彼の自室を改造した美容室の捜索に踏み切ると、カーテンで隠した一角に約3㎡ほどの隠し部屋があったんです。ベニヤ板を外して中に入ってみると、37本の大麻草が栽培されており、乾燥大麻178gも押収できました」

その分量もさることながら、捜査陣がさらに驚いたのは森本容疑者の大麻栽培技術の高さだったという。

「とにかく押収した大麻の幻覚成分濃度が高い。幻覚成分は大麻の葉っぱよりもバッズと呼ばれる花穂(かすい)部分に多く含まれるのですが、森本容疑者は日照時間や湿度などを巧みにコントロールして、このバッズを大きく育てる栽培技術を身につけていました。

しかも大麻草は生育段階が異なるいくつかのグループに分けて栽培されており、常に新鮮な大麻が収穫できるよう工夫されていた。その技術はまさに大麻栽培の名人と呼ぶにふさわしいもの」(前出・麻薬取締官)

興味深いのは、森本容疑者は大麻を商品として売るだけでなく、気が向くと客に「はい、オマケ」と、無償でサービスしていたことだ。地元紙の記者が言う。

「森本容疑者は以前は神戸市三宮(さんのみや)で開業していたんですが、10年ほど前、景色のいい所で仕事したいと、明石海峡大橋が一望できる今のマンションに自宅兼美容室をオープンさせたんです。その新店に三宮時代の客がわざわざカットに訪れた際、『遠い所まで来店してくれてありがとう』と、手製の紙巻き大麻たばこを2、3本プレゼントしたことが『オマケ』の始まりだったようです」

大麻愛好家のサロン状態?

そうこうするうちに、「森本容疑者の美容室で髪をカットすると、純度の高い大麻たばこをただでもらえる」とのウワサが地元では広まっていったという。

間もなくこの美容室は大麻愛好家のたまり場となり、地元客だけでなく、電車で20分ほどかかる三宮界隈(かいわい)からも多くの客が来店していたという。

「カットよりもオマケの大麻目当てで定期的に通うリピーター客が多かった。中には子供を連れてくる者や髪が伸びてもいないのに月に2回も3回も通いつめる客もいたと聞いています。森本容疑者はそんな客には『髪の毛のカットはもうええから』と、相場より安い値段で直接、大麻を分けていたそうです」(前出・記者)

森本容疑者は明石海峡大橋が見下ろせるこの美容室で、商売そっちのけで客と一緒に大麻を吸引して盛り上がることも少なくなかったとか。オマケといい、相場より安い価格設定といい、どうもこの美容師、大麻ビジネスでひと儲(もう)けしようという色気は薄かったようだ。ひょっとして同好の人間を集め、大麻を楽しむサロンをつくりたかったのか?

美容室での森本容疑者の様子を知るべく、週プレ記者は兵庫県へと飛んだ。そして探し続けること丸2日、やっと森本容疑者にカットしてもらったという垂水区在住の30代女性を見つけた。この女性が証言する。

「母の紹介で数年前に2度、1年前に1度、計3回訪れました。私はオマケをもらったことはないんですが、最初に行ってビックリしたのは店内の様子。植物があっちこっちに置いてあって、まるで薄汚れた廃墟とジャングルが一緒になったかのような佇(たたず)まいでした。美容師は森本容疑者ひとり。どうも本人はその内装でアートっぽいイメージを出そうとしているようでした。本人の印象? 最低でした。笑顔も会話もなく、こちらの注文を聞くこともなく、勝手にカットされてしまいました」

ところが、この女性が2度目に訪れると、森本容疑者の印象は一変していたという。

「お酒でも飲んでるのかと心配になるほど、よくしゃべるんです。しかもその内容は客の悪口ばかり。無口だった前回とはまるで別人のように冗舌でしたね」

最近の大麻は危険すぎる代物に

そして昨年の初夏、3度目に訪れると、今度は室内の様子までも激変していたという。

「店内に所狭しと、何台ものミシンやマネキンがずらりと並び、とても美容室とは思えない様子でした。服やバッグなどを自作して販売もしていると聞かされました。森本容疑者はというと、初回の時のようにまた無口で無愛想な美容師さんに戻っていました。

カットの注文を聞くこともなく適当に切りだしたかと思えば、すごい力で髪の毛を引っ張られたりもして。イタタタタタァーッと声が出るほどでしたよ。さらに帰ってからわかったんですが、後頭部の1ヵ所だけ、ものすごく短く切られていて、この店、どうなってんのと思いました。でも彼が大麻で捕まったと聞くと、あぁ、やっぱりなという印象ですね」

大麻というと「海外では合法化している国が少なからずあり」「健康への被害はたばこより軽い」としばしば耳にするが、今、多く出回っているものは、ひと昔前の大麻と違って、かなりヤバイものだという。

「最近の大麻は以前と違って、幻覚成分が10倍から20倍もあるようなものが主流。そのせいか最近の大麻犯の多くは記憶力が著しく低下していて、大麻は危険なドラッグではないというイメージは明らかに間違っています」(前出・麻薬取締官)

怪しげなオマケには、くれぐれもご用心を。

(取材・文/ボールルーム)