初対面の女性と相席でお酒が飲める「婚活応援酒場 相席屋」の出店スピードが凄まじい。
東京・赤羽に1号店をオープンしたのが昨年3月。その後、1年余りで40店を突破(7月22日時点)し、出店エリアは東京(19店舗)を中心に15都道府県に広がった。
今後も横須賀中央店(神奈川・7月27日)、お初天神店(大阪・31日)、川越店(埼玉・8月4日)など続々オープン予定で、8月中にも50店に到達する見込みだ。今後、相席屋はどこまで店数を増やす方針なのだろう?
「相席屋を運営するセクションエイトの横山(淳司)社長は、2016年中に47都道府県へ計100店舗を出店すると息巻いています」(飲食業界誌記者)
現在の相席屋の盛況ぶりを見ると、それも達成不可能な数字ではない? それほどの勢いなわけだが、人気の秘密がどこにあるのか早速、現地へ!
相席屋は、夕方5時にオープンし翌朝5時まで営業を続ける店が多いのだが、それでも週末は常時満席で行列ができるという。7月11日(土)、渋谷南口店では開店前から店前に20~30人の男女が行列を成し、都心から少し離れた錦糸町店(東京・江東区)でも20時時点で男18組待ち、女10組待ち…。
「平日でも19時台で満席になる日が多いので、早めにご来店ください」(錦糸町店員)
入店待ちとなった場合、携帯番号を伝えれば順番が回って来た時点で連絡をくれるのだが、その日、とうとう記者のケータイに店からの着信が入ることはなかった…。予想以上の盛況ぶりである。
そんな相席屋のシステムは、男性が30分1500円、女性は無料(時間無制限)で食べ飲み放題。男女とも2人以上での入店が条件だが、相席したい女性の年齢を店員に伝えると、それに見合った女性客を席に連れてきてくれる。店内の混み具合で相席が成立しないこともあるが、その場合は通常の居酒屋として男だけで飲み食いすることに…(ドリンク全品500円)。
相席屋の儲けのカラクリとは?
相席屋がウケている最大の理由は、女性からの支持が大きい点にある。相席居酒屋のポータルサイト「相席ナビ」を運営する㈱アオイの野入栄祐(のいりえいすけ)氏がこう話す。
「女性はタダ飲み、タダ食いができます。他店ではありえないこの圧倒的なお得感が、特に稼ぎの低い若い女性を引き寄せています。また〝出会い系〟となると、やはり抵抗感や不信感を抱く女性が多いものですが、相席屋は店数を全国に増やし、メディアにも多数露出させたことでブランドの認知度を高め、そうした不安を払拭(ふっしょく)することができました。この安心感が女性の集客力をより高めているわけです」
女が集まれば、男も集まる。こうして客数はどんどん伸びていくわけだ。さらに、相席屋のビジネスモデルが儲けが出やすい理由を前出の飲食業界誌記者が続ける。
「フードは唐揚げやポテトフライなど安い原価で誰でも作れる定番メニューだけをそろえ、ドリンクは2杯目以降はセルフサービス。生ビールも自分で注ぎにいく必要があり、ジョッキやグラスはすべて使い回しです。こうして低コスト運営を徹底する一方で、儲けを生みやすい『自動延長制』を導入している。
男性は初回30分1500円(金・土・祝前日1800円)ですが、それ以降は10分500円(同600円)が自動加算されていく仕組みです。女性との相性が合えば、男性は時間を忘れて会話に没頭しますから2時間なんてあっという間。その場合、週末なら会計は14400円(男性2人分)になります」
なるほど…急成長も納得だが、その背景には街コンブームの衰退もあった。
「ここ数年、男女の出会いの場として盛り上がりを見せていた街コンも今や下火。多くの主催社が参加者不足に頭を抱えているのが実情です。男女比が7:3や8:2といった不均衡な状況で無理やり開催に踏み切るケースも目立ち、それがクレームにつながって〝街コン離れ〟がさらに加速するという悪循環に陥っています」(前出・野入氏)
街コンから離れた男女の多くが今、相席屋に流入しているというわけだ。
「街コンは開催日程が決まっていて事前予約が必要ですが、相席屋は『今夜ヒマができた』という人でも飛び入り参加できる敷居の低さが最大の魅力です。専用アプリをダウンロードすれば、男女の入店状況をリアルタイムで確認できる点も利便性が高い。
四国や北陸地方など空白エリアがまだ広範囲に残されている点を考えれば、来年中の100店舗突破はクリアするでしょうね」(野入氏)
だが、急成長の先には落とし穴がつきもの…。明日配信予定の後編では、相席屋を失速させかねない“業界のウラ側”に迫る――。
(取材・文/興山英雄)