急成長を遂げた相席屋だが、類似店の“暴走”で共倒れする危険をはらむ 急成長を遂げた相席屋だが、類似店の“暴走”で共倒れする危険をはらむ

現在、破竹の勢いで店数を増やしている「婚活応援酒場 相席屋」。昨年3月の1号店(東京・赤羽店)オープンから1年余りで41店舗(7月22日時点)を出店し、来年中には100店まで増やすというが…。

その人気の背景を前編記事ではお送りしたが、実はイケイケの裏で不安視されるアブナい要因もあるとか。相席居酒屋のポータルサイト「相席ナビ」を運営する㈱アオイの取締役、野入栄祐(のいりえいすけ)氏がこう話す。

「実は、相席屋を運営するセクションエイトは、セクシー居酒屋の『居酒屋はなこ』の運営会社。その『はなこ』はピーク時には全国に40店近くまで店数を増やしましたが、現在は6店に激減しています。同社は『はなこ』の店舗を続々と『相席屋』に業態転換…といっても店の看板を掛け換えるなど、初期投資を最小限に抑える手法で出店数を急伸させていったのです」

昨年からはフランチャイズ(FC)展開も始め、出店スピードをさらに加速させた。

「現在、全店の半数に当たる約20店舗がFC店。そのフランチャイジーの多くは、ステーキ屋『けん』を展開するエムグラントフードサービスなどの外食ベンチャーが占めています」(飲食業界誌記者)

相席屋の運営会社・セクションエイト社長の横山淳司氏は、今後もFC店を増やしながら、出店スピードを加速させる方針だという。そこで、成功の秘訣や今後の出店戦略について話を聞こうと同社に取材を申し込んだのだが、「経営に関わる話は一切お答えできません」との理由で断られてしまった。

その理由について、前出の野入氏がこう推察する。

「横山社長には苦い経験がありますからね。露出度の高いセクシーな制服を着た女性スタッフが接客を担うという『居酒屋はなこ』の業態は彼が生み出したもので、その後、居酒屋業界に旋風を巻き起こしました。ところが、まさに今の相席屋のように全国へ店舗網を広げていた時、コピー店が雨後の筍(たけのこ)のように出てきて“畑”を荒らされたんです。

『はなこ』は健全運営を行なっていましたが、多くのコピー店が追随して、現役女子高生を雇って水着姿で接客させたり、Tバックイベントを実施したり、客の隣に座らせてお酒を注がせたりと風営法に抵触する違法営業が常態化し…。その後、警察が違法なセクシー居酒屋の摘発に乗り出し、業界全体のイメージが地に堕ちてしてしまったわけです。

『はなこ』も“同類”と見なされ、マスコミやネットにさんざん叩かれました。結局、売上げを回復させることができず、横山社長は『はなこ』に見切りをつけざるをえなくなったんです」

『はなこ』の二の舞は踏みたくない!

なるほど、それでマスコミへの露出も慎重に?

「『はなこ』は、性風俗業界の参入により沈んでしまいましたから、横山社長は“相席屋で同じ轍(てつ)は絶対に踏むまい”と慎重になっているんですよ。だから、店の運営ノウハウに関わるような取材は受けたくないのでしょう」

だが、“同じ轍”…つまり相席業界へのフーゾク系列店参入の兆候はすでに新宿・歌舞伎町にあった!

7月16日夜――相席屋・歌舞伎町店に訪れるも満席で入れず、付近の裏通りを歩いていると、キャッチのオジさんが「ヌキ、どうです?」と声を掛けてきた。「相席屋に行きたかったんですけど満席で…今日は帰ります」と一度は断ったのだが、「相席屋なら他に2店舗あるよ(※実際は別の店名)」と近くにいたキャッチの兄さんを手招きし、「この方、相席屋に行きたいんだと。紹介してあげて」と斡旋(あっせん)するではないか。

すると、キャッチの兄さんは「店の状況を確かめますね」といって、まずA店にケータイで連絡。どうやら店は満席だったようで、今度はB店に連絡。電話を切ると、「席は空いていて、女性が男性の来店を待っている状況です」と告げられた。

ピンサロのキャッチと深いつながりのある、相席居酒屋のキャッチ。これは怪しい(苦笑)。再び前出の飲食業界誌記者の説明によると、

「歌舞伎町や渋谷には違法まがいの相席店が出始めています。B店もそのひとつですね。相席屋にサクラはいませんが、そうした店では水商売の女性や街中でスカウトした一般女性に時給を渡し、店に待機させているんです。料金システムは表向き、60分3千円などと良心的ですが、隣についた女性が頼むドリンク代がボッタクリ価格であるケースが大半。

B店では60分・5万円(男性2人分)を払わされた被害者もいます。そうした店は『相席屋』と店名が似ていて、看板のデザインもソックリなので間違えて店に入ってしまう人が少なくないんです…」

こうしたコピー店の違法営業には相席屋も頭を悩ませているようで、『キャッチ注意!』『相席屋の系列店と称して悪質なボッタクリ被害が報告されています!』――店の入口には注意喚起を促す、こんな張り紙が何枚もあった。

早くも相席居酒屋への侵食を始めていたフーゾク業界。順風満帆で全国制覇を目論むも「同じ轍は踏むまい」という、横山社長の苦虫を噛みつぶしたような心の声が聞こえてきそう…。だが、客の我々も類似のボッタクリ店には今後要注意!

(取材・文/興山英雄)

 業界のフーゾク化、違法化の流れを食い止めようと、相席屋は必死で客に注意喚起を促してはいるが… 業界のフーゾク化、違法化の流れを食い止めようと、相席屋は必死で客に注意喚起を促してはいるが…