野良猫の糞(ふん)害が、社会問題になっている。

京都市は7月1日から「動物との共生に向けたマナー等に関する条例」、いわゆる野良猫への“エサやり禁止条例”を施行した。違反者には5万円以下の罰金を科すという(罰金は10月1日より)。

京都市の中でも野良猫による糞害が特に大きいとされているのが、観光名所でもある哲学の道だ。住民が語る。

「この辺りには50匹くらいの野良猫がいるんじゃないでしょうか。これほどまでに数が増えたのは、観光客や猫好きな人がエサを与えるようになったことと、3、4年前に近くの民家が空き屋になり、そこに野良猫たちがすみついて、子猫を産んでいるからです」(糞害住民Aさん)

「毎日のように庭先に糞尿をされます。ホームセンターで買った、猫が近づかなくなる薬をまきましたが、慣れてしまったのかまったく効果がありません。知人は超音波で猫を撃退する機械を設置しましたが、超音波が当たらない一角を狙って糞をされるそうです」(糞害住民Bさん)

しかし、エサやり禁止条例が施行されたことで、そんなつらい日々からも解放されたのでは?

「いやいや、状況はまったく変わっていませんよ。野良猫にエサをやる人は以前と同じようにやっています。そりゃそうですよ。市役所は『エサやりは構いません。その代わり、糞の始末もしてください』と言ってるわけですから」(糞害住民Cさん)

実は、京都市が施行したのは厳密には「エサやり禁止」ではなく、「エサをやる人は糞の始末もしろ」という条例だったのだ。そこで、京都市の担当者に話を聞いてみた。

「ルールを守って適切なエサやりをしてくださいということです。猫のした糞がその人がやったエサがもとになっているのなら対処していただく必要があります。野良猫が移動するのはわかりますが、例えば、お隣の庭に糞をしたなら、そこに出向いて掃除をしてほしい」(京都市保険福祉局)とのこと。

「京都市」vs「糞害住民+エサをやる人」に

しかし、どこに行くかわからない猫を追いかけるのは大変だし、その猫のした糞が自分の与えたエサによるものかを判断するのは難しい。なんとも現実味のない条例だ。

「『野良猫の糞害をなんとかしろ』という住民の苦情に対して、市役所は何かしなくてはいけない。でも、動物愛護団体を刺激したくないので『いろいろやってますよ』というポーズにしか見えません」(糞害住民Dさん)

一方、エサをやっている人たちは、この条例をどう思っているのか。

「エサをやるなら、その猫がする糞まで処理しろというのは現実的に無理。それよりも猫専用のトイレでも作ったほうがまし」(野良猫にエサをやっていたEさん)

「中途半端な条例を作るくらいなら民間のボランティア団体がやっているような不妊去勢手術を市が先頭に立って積極的にやるべきだよ」(野良猫にエサをやっていたFさん)

と、エサをやる人たちからもこの条例は悪評のようだ。京都市の条例は「糞害住民」vs「エサをやる人」のケンカを解決するものと期待されていたが、結局は両者にいい顔をしようとした「京都市」vs「糞害住民+エサをやる人」という構図になってしまったようだ。

(取材・文・撮影/ボールルーム)