4年に1度の教科書採択の年に、8月中の期限ぎりぎりまで各地教育委員会の動向が注目された。
特に歴史教科書に関しては今年が戦後70周年の節目で、安保法案の審議も注目される中、話題は保守系とされる育鵬社の歴史教科書がどれだけ採用されるかに集まった。
結果は微増ということだが、その中にはこれまで“左寄り”だとされてきた地域も含まれており、大阪市でも新たに採用。その背景については、前回記事「教育委員会にはびこる教科書選定“絞り込み”の実態に内憂外患な異変!」で伝えた。
そこで、肝心の教科書の中身は?と気になるところだが、最も“左寄り”とされ、圧倒的なトップシェアを誇る東京書籍について、元社員が驚きの告発をしてくれた。
「もう10年以上も前の話になりますが、私が新入社員の時に受けた研修で、当時の社長が『南京事件』について衝撃的な発言をしたんです。当時は『南京大虐殺』と表記してありましたが、殺害された被害者数は20万人と記述されていた。この根拠について、ある新入社員が質問したところ、社長はこう言ったんです。
『殺された人数は諸説あり、1万人とも100万人ともいわれています。ちょうどいい線が20万人くらいなのです』
とんでもない会社に入ってしまったと思いました。だって、子供たちに教える教科書で、超重要な歴史的事件の数字を“なんとなく”決めていると社長が言うのですから」
その研修後、彼は役員からこんな話も聞いたという。
「『教科書会社といっても民間企業だからね。利益を上げる必要がある。売れる本を作らきゃ意味がないんだよ』と。つまり、教科書採択は日教組などの左翼勢力が強い影響力を持っているから、彼らが気に入る内容の教科書を作らないと売れないってことです。東京書籍が断トツのシェアである理由をその時、私も初めて知ったんです…」
実際、内容を具体的に見てみることに。最新の東京書籍の歴史教科書から、どのあたりが“左寄り”なのか、神奈川県某市で中学校の校長を務めた男性に解説してもらった。
明治維新の志士たちも不遇の扱い?
「例えば、歴代の日本の高額紙幤の肖像になっている聖徳太子と福澤諭吉で見てみましょう。聖徳太子は十七条の憲法や冠位十二階、遣隋使などが有名ですが、紙幤にされるほど評価される理由は他にあります。それは当時、圧倒的な国力を誇っていた隋(今の中国)に対し、
『日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙(つつが)無きや(日が昇る国の天子から、日が沈む国の天子に宛てて手紙を送ります。ご無事にお過ごしですか)』
という対等な目線の文面で手紙を送り、小国だが独立した国家であるという姿勢を日本史上初めて示したことにあるのです。しかし、東京書籍はこの話を載せない。
福澤諭吉も『学問のすゝめ』を書いて慶應義塾を創立した人とは書いてありますが、日本の近代化にどれだけ貢献したかは記述しない。なぜなら福澤は“脱亜入欧”を唱えた人物だからです。時代状況に関係なく、アジア軽視自体は左翼的に認められない。
他にも、日本人が誇りに思うべき戦国武将や吉田松陰といった明治維新の志士たちに関しても、意図的としか思えないほどあっさりした表現で済ましています。このあたりの記述は育鵬社のほうがはるかに充実しています」
では、保守派の教科書のほうがいい?
「いえ、保守は保守でバランスを欠いたものもあり、あまりに日本の立場のみで語る場面が多い教科書もあるのです。特に近代の戦争や植民地支配に関する記述においては、『日本の負の歴史を自虐的に強調しろ』とは言いませんが、相手国の立場も併記してこそ、左右どっちにも偏らない考え方を生徒に持たせられるし、それこそが未来のある子供のための真の教育だと思うのですがねえ…」(元校長)
4年後に迎える次回の教科書採択までに教育委員会制度が正しく機能し、まともなプロセスで選ばれるようになっていてほしい。そして左が右がということでなく、教育するにふさわしい教科書が作られていいはず。教育は未来のためにあるのだから。