週刊誌には39匹飼っているとされたが、外に出しているのはこの愛猫「ニィー」 と彼女が産んだ子猫2匹の3匹だけという

この夏、人々を悲しみと憤りに包んだ寝屋川中学生殺害事件。

すでに同市在住の山田浩二容疑者(45)が死体遺棄の疑いで逮捕されたのだが、その報道がエスカレートする中、世間の注目を集めた人物がいる。

それが山田容疑者の逮捕まで連日、TVなどメディアに登場していた「ネコじい」こと戸塚正樹さん(43)だ。

戸塚さんは被害者の中学生ふたりが殺害される直前、市内のコンビニの前で言葉を交わしていたと自らメディアに証言。そのひげ面にニットキャップ、首にはアクセサリー代わりにチェーンを巻くという独特のスタイルもあって、一部マスコミやネット民などから容疑者ではないか?との憶測が飛んだ。

「犯人が目撃者として証言するパターンはよくあること」「ネコじいが怪しい!」と“犯人”扱いを受けてしまったのだ。まったく気の毒としか言いようがない。

だが、その後も一部の女性週刊誌報道などで反響は収まらず、地元では様々な波紋を呼んでいるという。そもそも戸塚さんとは一体どんな人なのか? 寝屋川市を訪ね、地元の人々にその評判を聞いてみた。

最初に耳にしたのはマイナス印象の評判だ。戸塚さんは文化住宅(賃貸の長屋風アパート)にたくさんの猫と一緒に暮らしている。近所の子供たちから、いつの頃からか「ネコじい」と呼ばれているのはそのためだ。

その文化住宅の玄関前にはポリバケツ、段ボール、ベニヤ板などがうず高く積まれていた。この光景を前に近所の住民がこうこぼす。

「あのゴミのようなものにはホンマ迷惑してますねん。今は敷地内にあるから法的には問題ないんやろけど。一時は敷地からはみ出るように置いてあった。それだけやない。猫のおしっこや糞があたりに散らばっていたこともあったなあ」

また、別の住民からはこんなグチも…。

「自転車を少しでも歩道にはみだすように停めていると、すぐに警察に通報しよる。それも1日に5回も6回も通報するので、そのたびに駆けつけなくてはいけない交番のお巡りさんのほうが困ってるやろ(苦笑)」

そのユニークな風貌に加え、ゴミ屋敷一歩手前の家にたくさんの猫と暮らす、その暮らしぶりに近所の人々からは「変人」のイメージを抱かれているようだ。

ナマポのくせに猫を飼っていいのか

こうした近隣住民の声を本人はどう受けとめるのか? 自宅周辺で本人を待っていると、自転車に乗った戸塚さんがどこからか戻ってきた。早速直撃すると、ワイルドな風貌から受ける印象とは真逆な丁寧で礼儀正しい言葉遣い。その話も実に理路整然とし誠実に対してくれた。

「自宅前に知人から預かった資材や廃品を積み上げているのは確かです。でも手作業で解体し、少しずつ家庭ゴミとして捨てています。猫の糞尿については、外で飼っているのは3匹だけ。その3匹の糞も定期的に見回って掃除しています」

なるほど、ゴミが悪臭を放っているわけではないと。しかも少しずつ処分し、今では公道にはみ出すほどの量ではないとなれば、目くじらを立てることでもなさそう。猫も週刊誌報道では39匹との表記もあったが、3匹以外は完全室内飼いでそちらは現在14、5匹。それも繁殖して増えぬようケージに入れているとか。

それでは、すぐに警察に通報する行為については?

「自転車や店の看板が公道をふさいで通行人が不自由しているケースが少なくない。それが違法だから通報しています。苦情を直接言わないのは、対面して暴力トラブルなどになるのを防ぐためです」

どうやら、本人は周囲に迷惑をかけるどころか、市民たるもの法令を順守し平和に暮らすべきという正義感の持ち主のようだ。

にもかかわらず、戸塚さんに注がれるまなざしは今回さらに「変人」「迷惑者」扱いが増し、TVに顔が出て、犯人扱いされた直後には自宅の窓ガラスが割られることもあったという。

「今回の報道をきっかけに私が生活保護者だということも世間に知られてしまい…。寝屋川市役所に『ナマポ(生活保護)のくせに猫を飼っていいのか!』などと苦情が殺到し、迷惑をかけているということです。あまりの激しさに市担当者から『生活保護を受けていることをマスコミには喋らないででほしい』とお願いされたほどです」

寝屋川の人気者で高校生にも写メを撮られるが…

実際、市役所は業務も滞(とどこお)るほどらしく、この件に関しては「一切答えられない」とのことだった。

生活保護者がペットを飼うことは行政も認めており、こうなると戸塚さんからすれば不当なバッシングだが…。ただ一方で、現地取材ではこんな好意的な反応を示す市民も少なくないことがわかった。

「ネコじい? 今では寝屋川の有名人ですわ。高校生にも人気でよく囲まれて写メを撮られています」(サラリーマン風の男性)

「最初にTVで見た時はその風体から怪しい人だと思っていたけど、もう見慣れてしまったのか、今はそうでもない。それどころか、だんだん垢抜けて男前にさえ見えるなあ」(中年男性)

こうしたプラス評価を伝えると、それまで表情の固かった戸塚さんが笑顔になった。

「山田容疑者が逮捕されて犯人の疑いが解けてからは、人々のまなざしがガラリと変わりました。町を歩いていると『あっ、ネコじいや』と指さされ、写メを撮られるようになりました(笑)」

確かにこの取材最中も20歳前後の見知らぬ若者グループから「ネコじい、早く家に帰らんとあかんぞ」との声をかけられ、「おー、わかったわかった」と笑顔で応える微笑ましいひと幕が…。

だが、その後も話を続けると戸塚さんの表情が再び曇り、その口から困惑とも怒りともつかぬ告発が飛び出た。「あの週刊誌に書かれたことは間違いばっかりで…」というのだ。

●この続きは明日配信予定

(取材/ボールルーム)