「生活保護の受給条件を超えてしまうほどの収入はないんです」と困惑するネコじいこと戸塚さん 「生活保護の受給条件を超えてしまうほどの収入はないんです」と困惑するネコじいこと戸塚さん

寝屋川中学生遺棄殺人事件で「犯行」を疑われ、思わぬ“時の人”となった「ネコじい」こと、戸塚正樹さん(43)。

その後、山田浩二容疑者(45)が逮捕され、戸塚さんへの容疑は晴れたものの、個性的すぎる容貌やキャラも興味を煽(あお)り、ネットや週刊誌で様々取り上げられ、生活保護を受けていることまで晒(さら)され騒動となっている。

だが、そんな報道には多くのねつ造があり、戸塚さん自身、被害者となっている実情が本人を直撃しわかった。一体、どんな嘘っぱちが流されたのか? 最初に戸塚さんが指摘したのが飼い猫の頭数だ。

「実は自分が『ネコじい』と呼ばれているということは、今回の報道で初めて知ったんです。外飼いの『ニイ』を抱いて公園で過ごすことはあったので、子供たちがそう呼ぶようになったのかな。ただ、自宅にいる猫たちは完全ケージ内飼育なので、外に出ることは一切ありません。

女性週刊誌には39匹もの猫を飼っていると書かれましたが、実際には17、18匹。自宅のケージ内で飼っているのが14〜15匹で、『ニイ』とその子猫2匹の計3匹だけが外飼いです。記者さんから聞かれて『この辺りの猫は全部合わせても30匹くらい』と答えた覚えがあります。それをカン違いされて、メモに書いた『30』という数字も『39』に誤読したのと違いますか…」

また、被害者の平田奈津美さん、星野凌斗君を目撃した際の証言内容も事実と違うものが少なくないと困惑する。

「コンビニ前で私がふたりに会ったのは8月12日の10時半頃という報道もありますが、実際には午後9時頃やったと思います。ローソンの駐車場の車止めに腰かけて、外飼いの2匹の子猫をブラッシングしていたら、平田さんが『かわいい』と声をかけてきたんです。中学生の外出には遅い時間帯ですが、ちょうど夏休み中ということもあって、家族と出かけたレジャー帰りに子供だけがコンビニに寄ったのかなというくらいに考えていたんです」

報道ではその後、戸塚さんがカップ麺(めん)を食べていた星野君に「(麺が)のびているやろ」と声をかけたことになっているが、これも…。

「カップ麺を食べていたのは平田さんのほう。それも話しかけたのではなく、彼女が麺を一本づつゆっくり食べていたので、私がそう思っただけです。星野君はコンビニに出たり入ったりが多く、ひと言も会話は交わしていません」

その様子を見て少し心配になった戸塚さんは、平田さんに「親は?」「もう遅いけど、帰らんでええんか?」と問いかけたというが、

「それに平田さんが『(帰らなくても)いいよ』と答えたと報道ではありましたが、これもウソ。実際には『アハハ』と、ごまかすように笑っただけです。今思えば、ふたりはその時、野宿を考えていた。帰宅を心配するような質問をしてくる大人には関わりたくなかったのかなと」

戸塚さんが最も怒りを感じた報道

ただ、こうした細かな誤報はニュアンスの曲解や、正しく伝わらなかった単純ミスと捉えることもできる。その一方で、戸塚さんが最も怒りを感じているのは某女性週刊誌が報じた以下のような記述だった。

“生活保護と空き缶回収で生計を立てる。自宅もある”——これにはため息をつきながら反論を語った。

「これだけ読めば、私が廃品回収の仕事で収入がたくさんあって、しかも家まで持っているように思えますよね。それで記事が配信されると、寝屋川市役所に『こんな人物が生活保護を受けるのはおかしい』とクレームが殺到するようになったそうです。

持ち家があるなんて、とんでもない! 住んでいるのは長屋暮らしで、もちろん賃貸です。廃品回収の仕事も一日の売上げは400円ほどにすぎません。生活保護の受給条件を超えてしまうほどの収入はないんです」

そう言いながら見せてくれた日々の売上げ伝票には、確かに300〜400円前後の数字が並んでいた。

そもそもは少しでも捜査に役立てばと応じた取材だったという。その正義感が仇(あだ)となって、犯人扱いに続いて生活保護を不正に受給しているのでは?などとバッシングされるハメになったというワケだ。

「最初はTVのカメラさんには首から下だけを映してもらっていた。ただ、そうやって顔を隠しても、首に巻いたチェーンですぐに私だとわかってしまう。『だったら、もういいや』と顔出しOKで取材に応じたんですが…」

と唇を噛む、戸塚さん。全くのいい迷惑でありバッシングの被害者だ。とはいえ、本人に後悔の念はないという。プライバシーを晒される危険を冒してでも、自らの証言を通じて伝えたかったことがあったからだ。

では一体、どういう願いを込めて証言者となったのか? 直撃インタビューで初めて明かされる「ネコじい」の壮絶な個人史、そして事件を風化させたくないという思いを次回配信ではお送りする。

●この続きは明日配信予定

(取材/ボールルーム)