9月、大阪府八尾市の市立中学校の運動会で行なわれた「組体操」で、生徒6人が重軽傷を負う事件があった。同中学校では組体操が運動会の定番行事となっており、今年は10段にも及ぶ巨大ピラミッドに挑もうとしていた。
しかし、10段目が完成したところでピラミッドは崩壊。下敷きになった生徒のひとりが右腕を骨折し、5人が負傷。この事故の模様はYouTubeに投稿され、瞬(またた)く間に全国へと拡散。運動会、さらには学校教育のあり方をめぐり、ネット上で議論が噴出している。
『週刊プレイボーイ』本誌で対談コラム「帰ってきた!なんかヘンだよね」を連載中の“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏も、事故の動画を視聴し、運動会で組体操を行なうことに違和感を覚えたという。
まず、ひろゆき氏は動画を観た際の率直な感想として疑問を呈する。
「映像を見てたら、失敗したのに観客は拍手してるんですよ。かなり高いところから落ちているのに、あれに拍手する神経が僕にはわかりません。なんかおかしくありませんか?
ビルの3階ぐらいの高さから人が落ちてくるので、下で支えている生徒の肋骨が折れて肺に刺さるって状況になってもおかしくないわけですよ。って考えると、最近の親御さんって自分の息子がそういう状況でも拍手しちゃうんですかね?」
さらに、「能力を競う種目に危険がつきまとうのはわかるんですよ。例えば、格闘技ってケガのリスクがあるわけですけど、個々の能力を競うことで格闘スキルが身につくわけじゃないすか」とした上で、
「それに比べて組体操ってケガのリスクを負いながら頑張って何か身につくんですかね? 達成感とか心理的なものを別にして、何が残るんですかね?」とも指摘。これには堀江氏も、「何も残らないでしょう」とバッサリ。
ひろゆき氏はそもそも、自分は運動会で組体操を行なう学校に通ったことがないため、「運動会では多人数ピラミッドが当たり前」という文化があることにも驚いたという。
ひろゆきとも違う、ホリエモンの考えは?
一方、堀江氏は自身の小学校時代を振り返り、「4、5段くらいのピラミッド」をやったことがあると語る。身長が高いほうだったため、一番下で支える役ばかりだった。「縁の下の力持ち的な達成感は、まあまあ」あったそうだ。
事故があった中学校では、組体操が伝統行事になっていた。そのため事故が起きた後も、対策をした上での継続を望む声が少なくない。ひろゆき氏がもっとも疑問を感じるのは、この点だ。組体操そのものの是非というより、ケガのリスクがある競技をどうしてわざわざ運動会で行なうのか。そこが合理的に納得できないという。
「個人的には、なんでそんなにケガのリスクを負う組体操にこだわるのかがよくわからないです。みんなで達成感を味わうのが醍醐味(だいごみ)なら、もっと安全な種目にしたっていいわけですよね。
体操つながりで男子新体操とか。アレを集団で真剣にやれば、結構サマになると思うんです。んで、新体操の技を覚えたり、バク転を覚えたりとかスキルがつくので、そっちのほうがどう考えてもいいんじゃないかと思います。
ぶっちゃけ、組体操で下のほうで支えてる人って何かスキルがつくわけじゃないですよね。同じケガのリスクを負うのであれば、スキルが習得できる競技に変えたほうがいいわけですよ」
ただ、これだけ組体操に反対のひろゆき氏も、「全員で力を合わせてやることのメリット」は理解しているとのこと。しかし、お金を払って客を呼んでいるイベントでもないのに「客が喜ぶから危険だけどやろうぜ!」というのは、運動会の趣旨から外れている。だから無理に継続させる意味はないし、禁止されても「誰も困らない」のではないかと指摘するのだ。
堀江氏はこうした意見に「確かに存在意義はない」と同意しつつも、「でも、誰も困らないという方向で考えていくと世の中の多くのものが必要なくなるでしょ。何もなくなったらつまんないし、そういうエンターテインメントの要素が人間には必要でもあるわけだから」とした上で、
「だから、何事も自己責任でやるのがベターなんだよ。俺は組体操も希望者がやる分には別にいいと思う」と、リスクがある競技は“自己責任での参加”を原則にすべきだと語る。
しかし、そこにも「そうなると子供が本当に希望してるのか、先生に言われて断れなくてやってるのかが気になります」(ひろゆき氏)という問題も残る。
組体操の是非から始まった議論だが、それは意外にひと筋縄ではいかない、教育のあり方そのものにも関わる問題を含んでいるようだ。
●この全文は『週刊プレイボーイ』44号でお読みいただけます!