11月19日、“盗撮ハンター”なる犯行グループが摘発された。
逮捕されたのは、都内在住の47歳・無職の男性と46歳の男性。この事件を取材した全国紙記者がこう話す。
「ふたりの容疑者は11月8日午後、新宿のデパートで女性を盗撮した37歳の会社員・男性に『盗撮を認めて示談金を払うか、認めないで起訴されるか決めろ。払わないとどうなるかわかるな』などといって脅し、現金を要求。その後、消費者金融に連れて行き、計150万円を借りさせようとしたところ、被害男性が110番通報をして事件が明るみになりました」
“盗撮ハンター”とは一体…? 盗撮事案を扱うレイ法律事務所の河西邦剛弁護士によると「最近、『盗撮ハンターに金銭を脅し取られた』という男性からの相談が増えている」のだという。
「半年前に相談に来た20代男性も150万円を脅し取られました。その男性は都内の駅構内のエスカレーターで目の前にいた女子高生の下着をスマホカメラで撮影した直後、『盗撮したな』と背後にいた大柄の男に腕をつかまれ、エスカレーターを上り切ったところには仲間の男が待ち構えていたそうです。
そのまま駅の隅で取り囲まれ、『警察に行くか示談金を払うか、どちらか選べ』と脅されました。その後、男性は銀行で数十万円を引き出し、残りを消費者金融で借金して計150万円をその場で支払ったそうです」
この話で気になるのが、盗撮被害者である女子高生の存在だ。
「どういう経緯でつながりができたのかはわかりませんが、実はその女子高生も恐喝した男ふたりとグルでした。他の被害者の相談事例を聞いても、女性が盗撮ハンターのグループの仲間であるケースが多いんです。恐らく元々、知り合いだったか、あるいは街中で『駅の中を歩いているだけでイイ金になるバイトがある』などと誘ってスカートの短い女性を雇い、犯行に及んでいるものと思われます」
“盗撮ハンティング”は成功率が高い?
電車の車内で痴漢をでっちあげ、示談金を脅し取るケースと類似した犯行手口だが、それとは決定的に異なるのが次の点だ。
「痴漢でっちあげの場合は実際には触ってなかった、冤罪だったという余地が残されていますが、盗撮ハンターの犯行では、男性は実際に下着を盗った加害者であり、しかも盗撮画像という客観的証拠がスマホの中に残っている。盗撮ハンターの目線でいえば、痴漢でっちあげよりも成功率が高い“ハニートラップ”といえます」(前出・河西弁護士)
複数の男がスカートの短い女性を駅ナカで回遊させ、“エサ”に食いつく男性が現れる瞬間を今か今かと待ち構えているーー。
昨今、“盗撮ハンター”が暗躍しているのはここ数年、盗撮事件が急増していることと大いに関係している。警察庁の発表によれば、2014年の盗撮による検挙件数は3265件。2010年の1741件から2倍近くに増えているのだ。
「スマホの爆発的な普及が盗撮急増の一番の理由ですが、事件化するのはごくわずか。盗撮犯はある一件の事案で現行犯逮捕されるわけですが、その後、当事務所に弁護依頼や相談に来る人は、逮捕されるまでに1千件~2千件もの盗撮を行なっている人が少なくありません。警察の検挙件数は、実際の盗撮件数の1%にも満たないんじゃないかというのが私の感覚です」
つまり、盗撮ハンターにとってはそれだけ“示談金を背負ったカモ”が街中にあふれているということになる。
「盗撮ハンターが請求する示談金は100万~150万円。最近、被害が増えているのは新宿、渋谷、池袋の駅構内にあるエスカレーターです。鉄道警察隊や私服警官の監視から逃れようと、駅近くの商業施設に現れるケースもあります」
今後も被害が増えていきそうな盗撮ハンターによる恐喝事件。だが、その被害者は同時に盗撮の加害者であり、自業自得であることを忘れてはならない。
目の前に“エサ(スカートの短い女性)”が歩いていても、決してスマホカメラを向けないように!
(取材・文/週プレNEWS編集部)