父親は子供に対し「証拠探し」をしてしまうのか…

元・光GENJIメンバーで俳優の大沢樹生が女優の元妻・喜多嶋舞との間にもうけた長男について「親子関係不存在」の確認を求めた訴訟で、東京家庭裁判所は原告側の勝訴という判決を下したーー。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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どんな家にも押し入れにはミイラが隠されている、と言った人がいました。悩み事や秘密のない家族はないという意味です。

家族の問題は当人にしかわからないし、それをよそからつつくのは無神経というもの。この一件も極めてデリケートで私的な問題なのに、メディアが同情顔で根掘り葉掘り取材するのはご当人たちにとってどれほどつらかろうと思います。

ある知人男性に子供が生まれた時、「いきなり目の前に人間を差し出されても…本当に自分の子なのか実感が湧かない」と、率直すぎる感想を述べていたのが印象的でした。

おなかの中に入っているのを実感できない男性は、身体感覚としては射精から新生児を抱くまで一足飛び。時時刻刻と子供の発生を体感した妻と違って「俺はこの子の父親だ」と自分に言い聞かせる作業が必要です。

裏を返せば、誰もが潜在的に「俺の子じゃなかったら」という不安を抱えているのかも。

産んだのを疑う余地のない母親と違って、時に父親は子供に対し意識的にせよ無意識のうちにせよ「証拠探し」をしてしまうのかなあ。父子のこじれの根底には、そんな男性の懊悩(おうのう)が感じられて切ないです。

●小島慶子(こじま・けいこ)タレント、エッセイスト。身長172㎝の私は、長身で薄っぺらい体形が父に、頑丈な下顎が母に似ている。姉は母譲りのグラマラスな体形で、父と同じ細い顎の超小顔。並んでも姉妹だと思われたことがない