通知カードの配達時に不在で受け取れなかった人が郵便局に押し寄せ、その窓口でも誤交付が頻発! 通知カードの配達時に不在で受け取れなかった人が郵便局に押し寄せ、その窓口でも誤交付が頻発!

マイナンバー通知カードの配達が遅れている。

日本郵便の発表では、配布する全5673万通のうち、配達が完了したのは2944万通と半数程度(11月23日時点)。総務省は「11月中に全戸配布する」と言っていたが、高市早苗総務相は11月24日の記者会見で「約510万通が12月にずれ込み、最も遅いところでは12月20日頃になる」と前言を撤回することになった。

そんな中、問題視されているのが通知カードの誤配だ。その件数は11月4日に2件、11日に3件、19日に7件、24日に11件と、日が経つごとに増えている。誤配は「別人の通知カードを渡す」「誤って他人の分と2通重ねて渡す」が主なパターンだ。日本郵便の広報担当者がこう話す。

「原因はすべて配達員の基本動作の不徹底。配達時に宛て名と住所を声に出して確認すれば防げた事故です」

だが、現場からはこんな声も…。東京都内の郵便局員A氏がこう打ち明ける。

「会社は誤配の責任を配達員に押しつけてばかり。配達員は皆、マイナンバー配達作業の毎日の激務に身も心も疲弊し、誤配がいつ起きてもおかしくない状況なんです。

ウチの局では配達の遅れを取り戻そうと、最近、超勤特別条項が発令されました。それ以降、通常は4時間までと決まっている残業時間が5時間に延長され、朝8時から夜10時までの12時間勤務が9日連続で続いています。体のいろんな部位が痛くなってきました」

休みナシの12時間9連勤とはなかなかの重労働。埼玉県の郵便局員B氏もこう話す。

「大規模な郵便局にはマイナンバー専門の配達員が配置されていますが、ウチは人数が少ないので、朝8時から通常業務で目いっぱい働いた後、夕方4時から夜9時まで通知カードを配達するという過重労働が続いています。

人が少ない理由? 秋口にマイナンバーから逃げるように結構な数の非正規局員が辞めてしまい…。局内の体制が手薄になって、通知カードの配達が回らなくなっているんです。会社は『本社の方針だから』と欠員補充はしてくれません」

日本郵政はクレームをものすごく嫌う!

B氏が言う“本社の方針”について、日本郵政の広報担当者がこう説明する。

「マイナンバーの配達要員として新たに人員補充することはありません。マイナンバーはひとつの誤配が重大な情報漏洩事故につながるデリケートな郵便物ですから新人がこなせる仕事ではないんです。基本的には全局、今働いている配達員で対応することにしています」

こうして配達員は長時間労働を強いられることになったわけだが、その現場ではマイナンバーならではの苦労もある。

「通知カードは封筒の紙質も色も形状も全部一緒なので、すごく小さな文字で印字された住所と氏名だけを判断材料にして配達しなければなりません。一通一通、誤りのないようにチェックしながら、ウチの局ではひとり一日180通から200通の配達が求められています。外灯のない暗がりでは宛て名が見えづらく、疲れてくると視界がボヤけてミスも起きやすい。でも、誤配は絶対に許されません」(A氏)

神奈川県内の郵便局員C氏もこう話す。

「住民票を持っている在日外国人の多い地域を担当していますが、氏名の読み方がわからず、本人確認の際に言葉が通じない人も多いから配達がなかなか進まなくて」

そしてマイナンバー配達員にとって最大の難所。それは高層マンションだ。前出のB氏はこう言う。

「まず、マンション入り口のオートロックで部屋番号を押してインターホンを鳴らし、配達先の『101号』の部屋に伺い、通知カードを渡します。その後、すぐに隣の『102号』へ行きたいのですが、それができない。また外に出て再度、インターホンを鳴らしてから配達しなければなりません。そのまま隣の部屋へ配達に行くと、居住者に『なんでインターホンを鳴らさずに勝手にマンションの中に入っているんだ!』と怒られ、会社に苦情の電話が入るケースがあるからです(苦笑)。

日本郵政という会社はクレームをものすごく嫌うお堅い社風なので、そういったことが起こらないよう、マンションでの配達は“往復”を徹底させられます。体力的にも精神的にも疲弊しますね。

その状態で配達し続けると、マンション内の玄関扉は基本的にデザインが同じなので、だんだん感覚がおかしくなる。で、誤って隣のお宅のインターホンを押してしまう、なんてこともよくある。自分もいつか誤配してしまうのではないかと不安です…」

さらにブラック化する郵便局…通知カード配達の激務に年賀状の集荷業務が重なって? この記事の続きは『週刊プレイボーイ』50号「マイナンバー事件簿」でお読みいただけます。

(取材・文/興山英雄)