2015年も残り僅か---。日常生活においてなんの信仰心がない人でも、大晦日から正月はお寺や神社に行く機会が増えることに変わりはないようだ。
そこで今年、バラエティー番組で“ぶっちゃけ”トークが大人気となり、週プレNEWSでもお盆以降、“あるある”ネタの記事で大好評を得たお坊さんに年の瀬も直撃!
おなじみ、現役僧侶たちが切り盛りする東京・四谷の「坊主バー」へ駆け込んで、店主の善念さん(以下、坊主)に年末年始の「坊主あるある」を聞いてみたーー。
―早速、お坊さんの年末の「あるある話」をお聞かせください。
坊主「“師走(しわす)”と言いますけど、忙しくなるのは事実です。寒くなるので急に亡くなる方もたくさんいて、葬儀がいろいろ入るんですよ。ちなみに三が日は火葬場が休みになるので、お医者さんが患者さんを年内に…という都市伝説を聞いたことあります(遠い目で)」
―あ、あくまで都市伝説ですよね。
坊主「大晦日は朝まで24時間参拝者を入れる大きなお寺もありますが、商魂たくましいところも結構あって。例えば、カウントダウン時の参拝者の多い時間帯に僧侶たちがたくさんの重しをつけて何分も一定の体勢をキープしたり、畳の上を横一列ですごい勢いで走ったりする修行を公開して、お賽銭アップを狙うお寺とか…。実際にお賽銭額も上がるみたいなんですけど(笑)」
―お寺商売も大変なんですね…。
坊主「除夜の鐘に関しても面白い話はあります。寺によっては、ストップウォッチで測って、24時に108つになるよう計算しつつ鐘をついたりするんですが、回数を途中で忘れてしまって、適当にごまかしたりするところもあるとか(笑)」
と、そんな話をしていたら、カウンターにひとりのカワイらしい女性客が。年の瀬の坊主バーに女性ひとりでやってくるなんて、悩みを抱えているに違いない…。とりあえず、煩悩丸出しで声をかけてみたら、なんと彼女、現役の神主さんというではないか!
思いがけず、お坊さんと神主さんが揃ったので、ここからはふたりにお正月の初詣についてあれこれと聞いてみた。
―そもそも寺と神社って何が違うんですか?
神主「寺は仏教、神社は神道ですからね、全く違うものです」
坊主「似ていてわからないぞ、という方に寺と神社の簡単な見分け方をお教えしましょう。本坪(賽銭箱の上に吊るされているガラガラ)が、お寺は鰐口で神社の場合は鈴になっています。その形から鰐口が女性器で、鈴が男性のタマを表していると言われています」
初詣は寺と神社どっちに行くべき?
―初めて知りました! 知ったところでアレですが…。
坊主「もっと言うと、大晦日に行なわれる紅白歌合戦は、紅組(女性)と白組(男性)に分かれて歌いますよね? 寺の本坪は女性器(紅)なので、お賽銭は同じ紅色系の5円、10円、5千円札、1万円札を入れ、寺の本坪は男性器(白)なので、白色系の1円、50円、100円、500円、千円札を入れるという“暗黙のルール”があると聞いたことあります」
神主「初耳です(苦笑)。その通りにしたら、寺ばっかりが儲かるじゃないですか」
―お賽銭といえば、5円(ご縁)は良いとか、20円(二重縁)はダメとか言いますけど、実際のところは?
神主「全然関係ないです(バッサリ)。貨幣制度ができたのは、神道の長い歴史から見たら、ごく最近のこと。5円が良いとか、ただの語呂合わせにすぎません。そもそも初穂料は読んで字のごとく稲穂をお供えしていたのが始まりですから、金額に関係なく自分の気持ちを納めれば良いのだと思います」
―初詣は寺と神社どっちに行けばいいんですか?
神主「ここで、どっちって言い切っちゃったら何かが起きそうですね(笑)。ただ本来は、自分が住んでいる地域の氏神様の神社へ参拝するのが一番良いのかと」
坊主「確かに初詣は神社が多いですかね。お寺でも、別院クラス・本山クラスの大きいお寺は初詣・初参りなどの参拝者は多いですけど」
―参拝時に毎年「今年は彼女できますように!」とか「宝くじ当たりますように!」ってお願いしちゃうんですが、神様や仏様にはなんてお願いするのが正しいんでしょう?
神主「まずは感謝ですね。『去年1年ありがとうございました。今年も1年よろしくお願いします』みたいな。そのあとに家内安全や厄年のご祈祷なども良いかと思いますよ」
最近目にする『神のみぞシール』って…
―神社のおみくじの「吉」とか「凶」って、割合はどこも同じなんですか?
神主「いいえ。おみくじを作る業者があるので、そのへんの塩梅(あんばい)は神社によって違います。そもそも凶を入れてない神社もありますし。ちなみに私の神社は大凶が入っていなくて凶までです」
坊主「そういえば今、プライバシーの問題で絵馬にシールを貼る神社が増えているみたいで、そのシールを『神のみぞシール』っていうらしいですね」
神主「えええ! それ知らなかった!! 」
―寺や神社は参拝者数ランキングで毎年話題になりますが、寺なら成田山新勝寺、川崎大師、浅草寺、神社なら明治神宮や鶴岡八幡宮あたりですよね。ぶっちゃけ、三が日だけで、めちゃくちゃ儲かりません?
神主「大きい神社やお寺なら何百万人と参拝者が来るので、それだけで1年は食べていけるでしょうね」
坊主「大きいお寺や神社であれば、賽銭箱の下にスペースがあって、そこに銀行の職員が4人くらいでお金を数えているという話を聞いたことがあります」
―最後になりますが、おふたりは年末年始、どのように過ごされているんですか?
神主「年末から年始までは参拝者が多く、1月中もご祈祷などで忙しく過ごしています」
坊主「31日まで坊主バーは営業していて、24時にここで法要します。そのあと、元旦はこの上の階にある『牧師バー』の牧師と一緒に近所の神社へ初詣に行こうかなと思っています(笑)」
牧師さんには“クリスマスあるある”の記事でお世話になりましたが…一緒に初詣って仲良すぎでしょ! しかも神社に行くって、もはや…(苦笑)。
その後、この坊主バー・善念さんから「31日は牧師バーが臨時休業のため、牧師さんと一緒に初詣に行けなくなりました。残念です」とのメッセージが…。いずれにせよ、宗教の垣根を越えて仲良くできる日本は、2016年も平和に違いないッス!
(取材・文/ケンジパーマ)