中国人は現地で「やりたい放題」。今、中国がアフリカで行なっていることは経済の形を借りた「新たな植民地主義」ですと語るムルアカ氏

豊かな鉱物資源と10億を超える人口を抱え、資本主義に残された「最後のフロンティア」として注目を集めるアフリカ大陸。

その200兆円ともいわれる巨大市場に近年、最も積極的な投資をしているのが、世界No.2の経済大国となった中国だ。

しかし、その中国が現地で行なう「ルール無視」の強引な手法や振る舞いがアフリカ各地で多くの摩擦を引き起こしているという。一体、中国は今、アフリカで何をしているのか、そして何を目指しているのか? そこで日本はこの残された巨大市場にどう向き合うべきなのか?

日本とアフリカに太いパイプを持ち、かつては鈴木宗男・元衆議院議員の傍らにそびえ立つ「身長209㎝の黒人秘書」としても知られた、ザイール共和国(現コンゴ民主共和国)出身のムウェテ・ムルアカ氏が「日本こそ、アフリカが期待する最善のパートナーになり得る」と訴えるのが『中国が喰いモノにするアフリカを日本が救う 200兆円市場のラストフロンティアで儲ける』だ。

―つい先日、中国の習近平国家主席がアフリカ諸国を歴訪し、総額7兆円にも及ぶ投資を約束したと聞いて驚きました。そもそも中国のアフリカへの進出はいつ頃から盛んになったのでしょうか?

ムルアカ 中国とアフリカ諸国の関係は古く、30年近く前から多くの留学生をアフリカから招くなど、将来に向けた人脈づくりを続けていました。しかし具体的なビジネスという意味での経済進出が本格化したのは最近で、おそらくこの10年ほどだと思います。

それまでアフリカへの投資国といえば、そのほとんどはEU圏内にある旧植民地の宗主国でした。そこへ「中国が勇気を持って進出してくれた」と、当初、アフリカ諸国はこの投資を大歓迎していたのです。

ところが、実際に中国の経済進出が本格化し、その身勝手な振る舞いが明らかになるにつれてアフリカでは中国が引き起こした多くの問題が表面化し、今や多くの人たちが中国に対して驚きや恐怖、怒りを感じ始めています。

―当初は歓迎された中国からの投資がネガティブな印象へと大きく変化したのはなぜなのでしょう?

ムルアカ 中国がアフリカ大陸に進出した本当の目的が「世界一の経済大国になる」という覇権主義の手段でしかないことが明らかになってきたからです。その目的を実現するために彼らはアフリカに進出し、手段を選ばないルール無視の「なんでもアリ」の手法を取っています。

そうやってアフリカ人の仕事や住む場所を奪い、自然環境を破壊し、水などの資源を買い占めながら、安全性が危ぶまれる食品や粗悪なコピー商品を大量に市場にバラまいて従来のシステムをぶち壊してしまうのです。

中国が行なっていることは経済の形を借りた「新たな植民地主義」

―本書では中国のいわゆる「ひもつき支援」についても厳しく批判されていますね。

ムルアカ 以前は中国の援助といえば、農業分野や漢方、はり治療などの東洋医学などが主でした。ところが今は「経済支援」と称しながら、実際には道路などの大型インフラ工事を中国企業に受注させ、その工事にはアフリカの人は使わずに中国本土から何万人もの労働者を送り込んでくるのです。

しかも、工事の質は最低で、でき上がった道路が全く使いものにならなかったり、ちょっとした雨で水没して人命が失われたりする事故も起きている。加えて、アフリカへと送り込まれた中国人労働者たちは、そのまま帰国しません。

彼らはそのまま住み着いて、現地で中国人コミュニティをつくり、海賊版DVDなど違法なコピー商品を次々に販売したり、現地の法律を無視して勝手に中国語放送のTV局をつくったりと、まさに「やりたい放題」です。今、中国が行なっていることは経済の形を借りた「新たな植民地主義」だと言ってもいいでしょう。

―ただ、「援助」と称して発展途上国に本来は不要な大型インフラを建設し、それを自国のゼネコンが受注する「ひもつき支援」については日本もこれまでたびたび非難されていて、中国に限ったことではないような気がします。

ムルアカ もちろん、現実にはどこの国でも「やってはいけないこと」をしている人たちはいます。また、海外への投資をする以上、自分たちの儲けを考えるのは当然だとも思います。

ただ、どんな行為にも許される限度というのがあって、例えば日本のゼネコンは、仕事に関してはキッチリやります。事前に調査をして、工事現場の管理やでき上がったものの品質も間違いありません。その点でいえば「なんでもあり」の中国とは比べるまでもありません。

―ムルアカさんは、そんな中国に代わって、アフリカの人たちが最も期待しているのが日本の進出だと本書で主張されています。

ムルアカ 今から70年前、太平洋戦争でアメリカが広島と長崎に落とされた原子爆弾の材料である「ウラン」がどこから来たのかご存じですか? 多くの日本人が知らないのですが、実は当時、アフリカのコンゴで採掘されたウランがアメリカに渡り、原爆となって日本に投下されたのです。

あの原爆で敗戦し、焼け野原となった日本が、勤勉な日本人の努力と優れた科学技術で経済大国になった。その日本について学びたい一心で、私は今から30年前に日本に留学しました。

今の日本は政府も民間も動きが鈍い

日本には優れた技術があり、中国にはない仕事の質へのこだわりや節度があり、何より「相手の立場に立って考える」という伝統がある。そんな日本に唯一欠けているものがあります。それが天然資源です。

一方、アフリカ大陸には、まだ多くの資源が眠っています。しかも多くの国では今、年平均5%を超える急激な経済発展によって中間層が育ち始めており、巨大な消費市場としてのポテンシャルも見逃せません。

ところが、今の日本は政府も民間も動きが鈍く、アフリカで積極的なビジネスを展開しようという人たちが少ない。そして、アフリカの将来性や重要さが正しく理解されていません。

最後のフロンティアであるアフリカの市場に中国がなりふり構わず進出を続ける中、日本がこのまま指をくわえて見ていては大きなチャンスを失うことになりかねない。中国の現実に気づいたアフリカ諸国が今、日本の進出に大きな期待を寄せているのです。

(インタビュー・文/川喜田 研)

●ムウェテ・ムルアカ(Muwete Muluaka)1961年、ザイール共和国(現コンゴ民主共和国)生まれ。国際政治評論家。千葉科学大学教授。神奈川工科大学特任教授。総務省と文部科学省の任期付き参与、経済産業省の任期付きアドバイザー。東京電機大学電子工学科卒業。工学博士。ザイール共和国国営放送日本代表、在日コンゴ民主共和国通商代表機関理事、コンゴ民主共和国キンシャサ大学客員教授も務めた。日本における外国人タレントプロダクション事業共同組合専務理事でもあった

■『中国が喰いモノにするアフリカを日本が救う 200兆円市場のラストフロンティアで儲ける』(講談社+α新書 840円+税)資本主義の「最後のフロンティア」といわれるアフリカ大陸。人口は爆発的に増加し、GDPは急伸、豊富な鉱物資源も魅力だ。世界各国がアフリカ開発の主導権を握ろうと進出している。そんななかひときわ力を入れているのが中国だ。先日も7兆円規模の投資を表明した。ところがそんな中国が今、アフリカから“嫌われている”と指摘するのが、元衆議院議員の鈴木宗男氏の秘書だったムルアカ氏だ。中国の現地での横暴な振る舞いを明らかにし、今こそ日本がアフリカに進出すべしと提言!