株式投資が一般の人に広がった昨今、株主優待にも注目が集まっている。財テクをしながら商品やサービスの割引が受けられるとあって、メディアでも“お得な株主優待”が何度も特集されるようになった。
優待目当てに株を買う人がいれば、企業も株価が上がってWIN-WINの関係になりそうなもの。しかし、2012年の『Yahoo!ファナインス』の株価予想にて、買うべきか、売るべきかを39連続で当てた伝説を持つ、SBI証券投資調査部シニアマーケットアナリストの藤本誠之氏は「有名企業はこれ以上株主を増やしたくない」と指摘する。
通称“相場の福の神”と呼ばれる藤本氏、株主優待事情の実態を聞いた。
―確かに株主優待って近年、何かと話題になりますね。
藤本 ただ、その結果として今は明らかに「株主優待バブル」になってます。例えば、「マクドナルド」の株価って、最近13年ぶりの高値をつけたんですよ。かつて「100円マック」などで絶好調だった時より、業績悪化が止まらない今のほうが株価は高い。
その理由は簡単で、株主優待が人気だからです。マクドナルドの優待はハンバーガー、サイドメニュー、ドリンクをそれぞれひとつずつ選べる券が年間12枚もらえる(100株保有の場合)。3点で900円ぐらいと考えたら1万800円分になります。このお得感があるから、株を持っている人は売らないし、買いたい人が次々と出てくる。そうなると必然的に株価は上がります。
しかし、このマクドナルドの優待内容は2002年にスタートしたもので、そのときは優待が株価に顕著な影響を与えていなかった。今は優待が過剰な注目を集めてます。
―何がきっかけで?
藤本 13年1月に、元将棋棋士の桐谷広人さんが『月曜から夜ふかし』というTV番組に登場しました。自転車に乗って株主優待生活をしている桐谷さんの姿が紹介され、株主優待の知名度が一気に上がりました。これがきっかけではないかと思います。
企業はこれ以上株主を増やしたくないが…
―株ビギナーがこぞって買い始めたということですか?
藤本 はい。どんなに業績が悪くてもみんなで買えば株価は上がりますからね。例えば、居酒屋チェーンの「コロワイド」は優待が人気で株価はなかなか下がりませんが、PER(株価収益率)が200倍近くで、異常に割高なんですよ。
―株価が上がるなら、優待はさらに豪華になる?
藤本 いや、実際のところ優待をやめたがっている企業は少なくない。以前は、マネー誌が「株主優待特集をやるから優待の写真を貸してください」と企業に言ったら、すぐ貸してくれたんですよ。でも、今はあまり貸してくれない。
記事になって株主が増えすぎると、事務コストが増えるし、株主総会をやれる会場もなくなっちゃうし。実は有名企業はこれ以上株主を増やしたくないんですよ。でも、やめると株主からクレームが入るからやめられない。
―株主優待バブルは続く?
藤本 はい。日本郵政が上場して、個人投資家は増えていますけど、日本人って農耕民族なので、買って売って儲ける狩猟的なことは不得意なんです。“ずっと持っていれば何かもらえる”というのが一番好き。貯金が好きっていうのもそういうことではないかと。だから株主優待は今後もさらに広まるし、バブルはまだ続くと思います。
では、実際にどんな株を買ったらいいのか? 発売中の『週刊プレイボーイ』3・4合併号の大特集では、今オススメできる優待株を一挙に紹介。2016年、楽しい株ライフの参考にお読みいただきたい。
(取材・文/関根弘康、撮影/五十嵐和博)