最低賃金1500円の実現を求めて若者たちが声を挙げたが…

昨年末に東京・新宿周辺で行なわれた「最低賃金デモ」を覚えているだろうか。

安倍政権が掲げる最低賃金の時給1000円への引き上げでは生活苦は解消されないとして、最低賃金1500円の実現を求めて若者たちが声を挙げたものだ。

東京だけでなく、大阪や名古屋、札幌などでも開催された同デモ。このニュースに反応したのが、『週刊プレイボーイ』本誌で対談コラム「帰ってきた!なんかヘンだよね」を連載中の“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人ひろゆき氏だ。

ふたりが違和感を覚えたのは、最低賃金が上がった際のデメリット。時給1500円が実現された場合、ロボットのほうが割安になる可能性があるため、返って自分たちの首を絞め、職が無くなっていくのでは?と疑問を呈したのだ。ひろゆき氏がこう指摘する。

「それに地方では最低賃金で人を雇っている企業が多いですよね。例えば、時給700円ぐらいだったのが、いきなり『最低時給は1500円です』ってなったら、多くの企業がやっていけなくなる可能性が高くなりますよ。すると、人を雇わないか廃業しちゃうことになる。

デモに参加してる人たちは『世の中には悪い企業があって、労働者を安い賃金でこき使っている。最低時給を上げれば、みんなが幸せになる』って考えてるんでしょうけど、そんな単純な図式じゃないですよね。物事っていろんな要素が絡み合って成り立っているわけで、それを理解できない人が意外と多いんですよね」

そこで、「それは深く考えずに単純に感情で動いているからじゃないの?」と堀江氏。特に若い時は感情に流され、社会の裏側の仕組みに気がつかないことが多い。中には、一生気がつかない人もいるかもしれないというワケ。

しかし、そうした人々の発言が最近になって目立ってきたのはなぜか?

「今までは、そういう人たちの発言力はほとんどなかったんですけど、ネットのおかげでそれなりに発言力を持つ人が出てきた。そんでヘンな徒党を組んで、今回のデモみたいなことが起きるんでしょうね」(ひろゆき氏)

「しかも、聞き心地の良い言葉を使うから扇動される人が多い。たぶん確信犯的にミスリードしてるやつが幹部にいるんだと思う」(堀江氏)

時給1500円が実現できるほど裕福なのか?

その上で、「時給1500円にすると自分たちの仕事がなくなるよ」と言っても聞く耳を持たれない。それならば、いっそのことデモに参加するより、「企業が暴利をむさぼってると本気で思っているなら、自分たちで起業すればいい」と両者は提案するが…。

しかし、ほとんどの人は実行しない。それどころか、「例えば『自分たちの仕事を守るためにロボットを規制しよう』とか、政府に文句を言ったりヘンな圧力団体をつくったりすると思います。すると、そのうちに海外のロボット技術が格段に進んで、国内産業ごと壊滅するみたいなシナリオも考えられる」とひろゆき氏は言う。

そもそも、日本はまだ時給1500円が実現できるほど裕福なのだろうか? すでに日本のGDPは中国に抜かれ世界3位。さらに、ひとりあたりのGDPは27位と落ち込んでいる。

この現状を踏まえ、堀江氏は「俺、いろんな国に行ってるからわかるけど、日本は本当に物価が安い」として、海外から観光客が押し寄せる理由を次のように語る。

「円安だからリーズナブルに買い物ができる。ブランド品の偽物もほとんど出回ってない。飲食店は味も接客も世界最高峰レベル。だから、中国人や東南アジアの富裕層が大挙して日本にやって来る。当たり前のことだよね。

人間が行なう労働への対価も安くなってる。例えば、マッサージ師の時給はタイのバンコクと北海道の札幌あたりでは、ほぼ同じくらいだったりする。ってことを札幌の人に言ってもポカーンとしてたな。要は、多くのアジアの人が、バブルの頃の日本人と同じことをしてんだよね」

それに、ひろゆき氏もうなずく。

「ニュースでは『アベノミクスで景気が上がった』なんて言ってますけど、株価が上がったのは為替を切り下げた(円安にした) からで、日本の商品の価値が上がったから売れるようになったわけではないんですよ。だけど、それをいいように解釈している人も多い気がしますね」

だから、「デモなんかしてる暇があったら、自分の好きなことを突き詰めて専門的なスキルを上げるとかすればいいのに」と堀江氏。これからの時代、外国人やロボットに負けないための方法を考えるべき、と突きつけているが…。

●この全文は『週刊プレイボーイ』5号(1月18日発売)でお読みいただけます!

(イラスト/西アズナブル)