毎月の家賃を考えると、人気の高いオシャレな街は、実は“コスパの悪い街”であるケースが少なくない 毎月の家賃を考えると、人気の高いオシャレな街は、実は“コスパの悪い街”であるケースが少なくない

様々なメディアで発表されている「住みたい街ランキング」

関東なら吉祥寺、恵比寿、横浜。関西なら西宮北口、梅田、千里中央などが毎年常連となっている。

確かに上位にランクインしている街はいずれもオシャレで便利で住みやすいのだろう。…だが、しかし! 人気ゆえに需要に対して物件の供給が間に合っておらず、必要以上に賃貸相場が高騰している事実もあるのだ。

例えば、恵比寿で“駅から徒歩5分以内の1Kマンション”の家賃相場はなんと11万円ほどにもなる。1Kで11万円って…!?

また、少し話は変わるが、例えば大手住宅情報サイトなどで吉祥寺の物件を検索すると、駅から「徒歩40分」や「バス30分」なんて物件も平気で引っかかったりもする。徒歩40分って…もう吉祥寺じゃないよ、そこ!

人気ゆえに実際のポテンシャル以上に賃貸価格が高止まり状態だったり、駅から離れた僻地(へきち)でも、その街の名をちゃっかり騙(かた)っていたりと散々な状態…。つまり、人気の街に共通していえるのは、“オシャレ”というフィルターを通しているがゆえに、賃貸価格から考えた際のコストパフォーマンスが非常に悪くなっているケースが多々あるということ。

そこで、本格的な引っ越しシーズンを目前にした今こそ、不動産のプロたちの意見を基に、“ガチでコスパが高い街”を独自にピックアップした!

ちなみに、選出基準は次の5つ。

【家賃】周辺エリアと比較して割安感があるか ②【アクセス】主要ターミナル駅などへ行きやすいか ③【飲食店】ウマくて安いお店がたくさんあるか ④【治安】夜道でも安全で犯罪発生件数は少ないか ⑤【住所】自慢できる“ハクがある”エリアか

以上、前置きが長くなったが、簡単に言うと「オシャレ」と「人気」という要素を排除した穴場な街を、ここから一挙に紹介していく!

まずは関東編から! 『All About』「住みやすい街選び(首都圏)」ガイドであり、『住まいのプロが教える30の警告 「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)などの著書がある中川寛子に狙い目となる駅の特徴を聞いた。

都内No.1のハイコスパ街はココ!

「超人気の路線を候補から外して選ぶのはひとつの手でしょう。首都圏エリアなら、東急東横線や東急田園都市線はオシャレなイメージが強く、全体的に賃貸相場も割高になってしまっていますが、逆に京王線やJR常磐線などは主要ターミナル駅へのアクセスがいい割に、それほどオシャレなイメージはないため穴場の街が見つかりやすい」

また、マイナーな路線も狙い目だと中川氏が続ける。

「今回挙げた中だと、武蔵新城があるJR南武線や松陰神社前がある東急世田谷線などがいい例ですね。JR南武線は立川と川崎をつなぐ路線ですが、どちらも都心のメジャー都市と比べてマイナー感があります。

また、三軒茶屋と下高井戸をつなぐ東急世田谷線は、女子ウケはそれほどしない下町っぽさのあるエリアなので、路線自体の知名度が低い。ですが、その名の通り、東急世田谷線の駅はすべて世田谷区にあるので、住所としてのハクがありながら賃貸価格は割安になっています」(中川氏)

JR南武線、東急世田谷線ともに1回乗り換えを挟めば主要ターミナル駅へのアクセスも悪くない。“乗り換えが必要”というデメリットが家賃の安さにつながるとポジティブに考えればいいわけだ。このように、世間的にデメリットと認識されている部分をポジティブにとらえれば、コスパの高い街が見つかるというのがセオリーらしい。

 「昭和臭い」「治安が悪い」とのイメージもある足立区・北千住だが、今ではオシャレなカフェや雑貨屋が多数点在。新旧がミックスされた住みよい街に様変わりしているという 「昭和臭い」「治安が悪い」とのイメージもある足立区・北千住だが、今ではオシャレなカフェや雑貨屋が多数点在。新旧がミックスされた住みよい街に様変わりしているという

不動産コンサルタント会社さくら事務所の会長であり、国交省や経産省の委員も歴任する長嶋修も、それが穴場を見つけるポイントだと語る。

「例えば、北千住は駅前にマルイやルミネといった大型商業ビルもあり、東京の東側でも知名度の高い駅ですが、治安が悪いイメージのある足立区ということで、あまり人気がない街でした。

ですが、ここ数年で近隣に5つの大学の誘致に成功し、街に若者がすごく増えているんです。それに伴い、オシャレなカフェや雑貨屋などがどんどんできている一方、昔ながらの飲み屋街なども健在。古いものと新しいものがミックスされて、とても魅力的な街に生まれ変わっているんですよね」

実際の北千住は治安の問題は特にないのだが、それでも昔のイメージを引きずっているため、今でも賃貸価格は割安だ。ちなみに、今回のテーマとは真逆だが、オシャレなイメージが先行しているエリアの中にも、掘り出しもの物件があることも。

「東京都港区の白金(しろかね)エリアは意外と割安な物件が多いんです。白金といえば“シロガネーゼ”などのマダムが住まう高級住宅街のイメージが強いですが、実はあの周辺には下町情緒あふれる住宅地もあるので、お宝物件がたくさんあります。特に駅から徒歩5分から10分ほどかかる物件が狙い目。実際、白金高輪駅や広尾駅まで徒歩10分以内で7万5千円前後の1Kマンションなどはよく出ていますからね」(長嶋氏)

さすがに多少日用品が高くなったり、近くに安い飲食店が少なかったりするかもしれないが、“シロカネ在住”というステータスで女子ウケを狙うのもありだ。

●明日、配信予定の後編では「ガチでコスパが高い街・関西編」をお送りします。

(取材・文/昌谷大介[A4studio])