「あの名古屋のゴミ屋敷のオジサンが、ついに家の片づけを始めたらしい」ーーそんなニュースが飛び込んできたのは2月末のこと。
名古屋のゴミ屋敷といえば、昨年5月頃からTVのワイドショーなどで大々的に放送され、一時は他県からも見物客が来る“観光名所”にまでなった場所。
空き缶や段ボールなどのゴミが3階建てビルの中だけでなく、玄関やベランダ、そして路上にまであふれ、ついには家主までが住めなくなり、外で寝泊まりする始末。昨年6月には名古屋市からゴミの強制撤去の通告も出されていた家だ。
この“名古屋のオジサン”は日本のゴミ屋敷界の中でも知名度の高いスター。もし彼が本当に片づけを始めたのなら、全国のゴミ屋敷の住人たちに与える影響も大きい!? 一体、オジサンに何があったのか。心境の変化を聞くため現地に向かった。
家の前に到着した記者の目に飛び込んできたのは、玄関の前まであふれ出るゴミの山…。正直、パッと見はそれほど片づけられていない印象だ。近くに人影はないが、玄関前からかすかにラジオの音が聞こえてくる。
音がするあたりを観察するとラジオ、毛布、段ボール、カツラが置いてあった…いや、これはカツラではなく人毛! いた、オジサンだ! …オジサンは午後の日だまりの中、玄関前の段ボールと毛布の中で、すやすやと眠っていたのだ。
お休み中に申し訳ないと思いながらも「すみませーん」と声をかけるも反応がない。そこで少し時間を置いて、夕方にあらためて訪問した。
すると、オジサンはすっかり起きて誰かと話し込んでいる様子。どうやら相手は他の週刊誌の記者のようだ。きっと、ゴミを片づけ始めたと聞いてやって来たのだろう。でも、オジサン、なんだか怒っている様子だ。
「プレイボーイまで来るのか!」
「みんなでさらし者にしやがって。あんたはどこの人?」
―『週刊プレイボーイ』っす。
「週刊プレイボーイ(笑)。プレイボーイまで来るのか! で、何が聞きたいの?」
―オジサンが片づけを始めたと聞いたので、どんな心境の変化があったのかを…。
「片づけはずっと前からやってるの! これ片づけないと家の中に入れないでしょ。家の中にあるのは、ほとんどがアルミ缶。でも業者が全然引き取りに来てくれないからたまっちゃってるんだよ。生ゴミはちゃんと捨ててますよ! 臭わないでしょ!」
―は、はい。確かに。
「去年からボランティアの人が月に1回来て、掃除を手伝ってくれてるんだよ。ちゃんと片づけてるんだから!」
―確かに2階のベランダはキレイになっていますが、まだまだこれでは…。
「TVで報道されるといろいろな人がやって来て、片づけができなくなるんだ。あんたたちみたいな人がこうやって来るでしょ!」
―すっ、すみません。
「だからもう決めた。片づけるのはやめる!」
―えーっ。
寒空の下、オジサンと約2時間もこんなやりとりをしていた本誌記者。オジサンの大事な片づけ時間を奪ってしまったと少しだけ反省するも、片づけが完了する日はまだまだ遠そうだ。
(取材・撮影/本誌ニュース班)