ネット通販の非正規品への対抗値下げを控えるようになったヤマダ電機(写真はLABI1日本総本店) ネット通販の非正規品への対抗値下げを控えるようになったヤマダ電機(写真はLABI1日本総本店)

家電量販店がインターネット価格への対抗値下げをやめたようだ――。

断定的に言えないのは、ヤマダもビックもヨドバシも公式発表していないから。ただ、各店舗の店員はそろってこう話す。

LABI都内某店・デジカメ売り場の店員 「ご存知の通り、ウチの業績は芳(かんば)しくありません。数年前から業績が悪化し営業赤字が出るようになって、昨年には不採算店約60店舗を大量閉鎖しています(5月に一時閉鎖を含め約50店、翌6月に11店舗を一斉閉鎖)。そうなった一番の原因がネット価格に対抗しすぎて収益が落ち込んだこと(苦笑)。そのため、1年ほど前にそれをやめました」

ビックカメラ都内某店・薄型テレビ売り場の店員 「ウチもネット価格への対応は控えるようにしています」

ここでいう“ネット価格”とは、リアル店舗を持たないネット通販業者が提示する非正規品の価格のこと。前出のLABI店員がこう打ち明ける。

「家電メーカーの販売会社を経由して取引きされるのが正規品。ヤマダもビックもヨドバシもネット通販サイトを立ち上げていますが、こちらはすべて正規ルートですので、他社のサイトの商品の方が安ければ、基本的には店頭で価格保証をいたします。

ただ、ネット上では正規取引のない非正規品が数多く出回っているのも実情。非正規品とは、新店オープン時に特別価格で提供されるセール品などを目当てに“並び屋”と呼ばれる人たちが店前に行列を作り、安価に仕入れた品ですね。また、一部の大手家電量販店が店頭でさばききれなかった在庫品をネット業者に安価に横流しする動きも水面下でありました。

薄型テレビの地デジ特需に沸いた2011年前後から、ネット業者がこうしたルートで仕入れた非正規品を“爆発的に安い価格”でネット販売するようになったのです」

その“爆発的に安い価格”はスマホでたやすく検索することが可能だ。価格比較サイト「価格コム」で該当商品の型番を入力すれば、現時点での最安価格を確認できる。

例えば、ソニー「ブラビア」の43型・4Kテレビの場合、LABI1日本総本店(東京・池袋)では16万9344円(税込み、ポイント10%、以下同)、その目の前にあるビックカメラ本店では17万1590円(ポイント10%)だったが、『価格コム』の最安価格は12万4800円(3月4日15時時点)。その販売元はネット通販を本業としており、ヤマダ電機より4万4544円、ビックカメラより4万6790円も安かった

キヤノンのコンパクトデジカメ「POWER SHOT G7 X」もヤマダ電機の58104円に対し、価格コムでの最安価格は4万6799円。販売元はやはりネット通販業者で1万円以上も安かった

店員が明かす、新・値下げ交渉術!

価格コムの最安価格を表示したスマホ画面を店員に見せ、それ以下の値下げを迫る手法は、“家電を最も安く買う交渉術”として一部のニュースサイトや個人ブログなどでも数多く取り上げられた。前出のLABI店員がこう話す。

「ヤマダ電機がネット通販価格への対抗を強力に打ち出していたのが2012年から2013年頃。当時は売り場に『他社のインターネット価格にも対応で安い!』と店頭ポップを並び立て、正規品、非正規品に関わらず、ネット品への対抗心むき出しで値下げ交渉にもガンガン応じていました。当時はヨドバシさん、ビックさんもウチに追随して『ネット価格徹底対抗!』と強力に打ち出していましたね」

だが、先述の通り、今はこの値下げ交渉術が通じなくなっている。

「ネット通販業者が販売する非正規品は、我々からすれば“仕入れ値すら割る異常な安値”なんです。そこに真正面から勝負を挑んだ結果、大量閉店に踏み切らざるをえないほど業績は悪化してしまいました。そのため、売り場で価格コムの最安価格を見せられても、販売元が、我々が指定する非正規のネット業者である場合、売り逃すとわかっていても対応しないようにしています」

ソニーの4Kテレビもキヤノンのコンデジも、もはやリアル店舗では爆安価格で購入できなくなっているわけだ。だが、前出のビックカメラの店員が「これは大きな声では言えないことなのですが…」と前置きしつつ、こんな話を明かしてくれた。

「基本的には“ネット価格には対抗しない”ということになってはいるものの、機種やタイミングによってはネット対抗いたします。やっぱり、商品が売れてないと本部のエラい人に怒られちゃう。怒られるくらいなら、非正規品に対抗して少々利益が減っても販売しちゃったほうがいいというフロア側の判断があるわけです」

で、非正規品の爆安価格への対抗値下げに応じてくれやい商品とは?

「機種でいえば、まずは終売が近い商品。わかりやすくいうと、2,3年前に発売された型落ち品ですね。売れないと不良在庫になりますから、店としても原価を割ってでも掃き出したいという事情があります。

ふたつ目が、メーカーからのリベートが手厚い商品。売り場では『売れ筋NO.1!』などとポップが付いているケースが多いですね。

最後にヘッドホンやイヤホン、USBメモリー、スマホカバーや液晶フィルムといったアクセサリー類。これらの品はお客様が値引き交渉を持ちかけない品なんですね。他店の価格を徹底調査してあらかじめ値引きした価格を表示する薄型テレビやデジカメと違い、アクセサリー類は定価のまま表示していますので、1割程度は値引きが可能なんです」

なるほど。では、ネット価格にも対応してくれやすいタイミングとは?

「やはり決算期でしょうね。この業界の決算期は3月。特に3月20日を過ぎると、売り上げ目標を達成しようと売り場は躍起になります。お店が暇な平日昼から夕方の時間帯を狙うと、より値引き交渉に応じてくれやすくなりますよ」

この値引き交渉術が実際に通じるかどうかは確証をもてないところではあるが…ビックカメラ(決算期は8月)以外はその決算期を迎えている。家電の購入を考えているなら試してみる価値はありそうだ。

(取材・文/興山英雄)