「突然だけど、胃がんの死亡率が一番低い県って、どこかわかる?」
『週刊プレイボーイ』本誌で、元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏と対談コラム「帰ってきた!なんかヘンだよね」を連載中の“ホリエモン”こと堀江貴文氏が、本誌21号の連載でいきなりこう切り出した。
正解は、沖縄県だという。しかも、その原因はピロリ菌にあると堀江氏。
「『胃がんの99%はピロリ菌が原因だ』っていう調査結果があって、食生活や気候が影響しているとか、いろいろいわれているけど、『ピロリ菌の種類が違う』っていう説が有力なんだよ。
ひと口にピロリ菌といっても地域によって差がある。例えば日本や韓国のピロリ菌は、欧米と比べて強力で、胃がんになるリスクが高い。あと、がんでいうと日本人は欧米型の食生活になったこともあって、大腸がんになる人が増えているよね。でもアメリカは逆に減っている。
理由のひとつは、保険会社がインセンティブを用意したから。アメリカは皆保険じゃないから、国民は民間の保険会社を利用するでしょ。そして加入者が病気になると保険会社は大金を支払わないといけないから、例えば『2年に1回大腸の内視鏡検査をしたら保険料が安くなる』とか、定期的に予防医療を受けるとお得になるプランを用意したんだよ。そういう仕組みをつくったら検査する人が増えて、大腸がんの死亡者が減ってきたんだって」
そう熱く語る堀江氏。保険会社はお金儲けのためにやっているものの、結果的にがんが減り、みんながハッピーになっているというわけだ。
「大腸がんの他にも早期発見で治るがんは、胃がんや子宮頸がん、乳がんなどたくさんある。だから、検診を受けると保険料が安くなるみたいに金銭的なインセンティブをつけるアプローチは効果的なんだよ。今後、国が保険会社や健康保険組合と組むのはひとつのソリューションだと思う」(堀江氏)
しかし、「日本はなぜ予防医療に予算をかけないのか?」ひろゆき氏がそう疑問を呈すると…。
「それは保険組合同士の連携がきちんと取れてないからだと思う。日本には多くの保険組合があるけど、厚生労働省はそのすべてをきちんと管轄してるわけではないからね」(堀江氏)
とはいえ、国民ががんになると決して安くない治療費や通院費がかかる。それを予防できるなら社会保障費の総額も下がるはず…ということを役人や政治家が考えないのはなぜか?
予防医療の普及を進めることが重要
「それは健康保険の仕組み自体に問題があるからじゃないかな。アメリカは個人が民間の保険会社に保険料を支払って、そこから医療費が出されるけど、日本は医療費のほとんどを国が払っているよね。
例えば、顧客が1千万人いる民間の健康保険会社があったとして、その社長が利益を上げようと思ったら、アメリカみたいにいろんな手を使ってでも検診を受けさせるよね。そういうふうに儲けを目的にしている民間企業なら市場原理が働くんだけど、日本は国や地方自治体など市場原理に関係ない人たちが健康保険を運営しているから、そこまで真剣に考えない」(堀江氏)
この意見にひろゆき氏もうなずく。
「日本って、例えば突然、がんの治療費を2倍にしても許されたりしますよね。だって患者は一部しか負担していないわけだし、もちろん医師も損をするわけではない。治療費が上がった分は、結局、国民の税金で賄(まかな)われるわけですが、あまり『払っている感覚』を持ってませんよね。もちろん、医療費を減らそうと頑張ってる役人はいるとは思いますけど『減らしたら特別ボーナスが出る』とかないので、どれだけ真剣になれるのか」
まさに、そこが構造的な欠陥であり、だからこそ「それを変える仕組みをつくりたいと思って、俺は今、予防医療の啓蒙キャンペーンをやってるんだ」と堀江氏。
ほとんどの日本人が知らない意外な事実を次々と語る堀江氏だが、最近こんな風にピロリ菌除菌の重要性について説くことが増えている。クラウドファンディングでも「ピロリ菌の除菌キャンペーン」を展開するほど熱心だ。しかし、なぜ急に…?
「キャンペーンで病気を予防できれば、そこに割いていた研究のリソースを別の病気に割くことができるじゃん。いわゆる難病といわれる病気以外にも、例えば、膵臓がんの研究はあまり進んでなくて原因が解明されてないんだよ。しかも、膵臓ってほかの臓器に比べてバリアがないの。肺だとリンパ節に守られているし、胃も上皮組織があって、がんが深層部までいくには時間がかかる」(堀江氏)
「国が本腰を入れてやってくれないから、まずは俺がやろうって思ってるんだよ」とクラウドファンディングなどの活用も視野に入れ、莫大な資金がなくても啓蒙キャンペーンや予防医療の普及を進めようとしている堀江氏。
この対談の全文は『週刊プレイボーイ』21号(5月9日発売)でお読みいただけます!
(イラスト/西アズナブル)