今年4月、栃木県のローカル線「真岡鐵道(もおかてつどう)」の線路脇で発覚した「菜の花踏み潰し事件」。その現場がSLの人気撮影スポットだったことから、犯人は“撮り鉄”とされた。
2010年代の初頭から、たびたび報告されるようになった“撮り鉄のマナー違反”。なぜ、彼らは反省しないのか?
ベテラン撮り鉄(50代)と若手撮り鉄(20代)に話を聞いてみたところ、「(同事件について)そんなに悪いこと? 菜の花なんてそこらへんで勝手に咲いているだけなんだし」、「ですよね、撮り鉄より記念切符や鉄道グッズを集める“収集鉄”のほうがひどいことやってる! 彼らこそ叩かれるべき」などと身勝手な言い分のオンパレード!(前編記事「反省しない撮り鉄たちの非常識な言い分 「そんなに悪いことかな?」」)
そして、彼らのぶっちゃけトークはさらにヒートアップしていくのだった…。
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ベテラン撮り鉄(以下、ベテラン) 俺が嫌いなのは「葬式鉄」(路線の廃止や車両の最後の運転などが決まると集まる鉄オタ)だね。客の少ない死にかけ路線はわかってるんだし、普段から乗りに来いよ! そうすれば廃止されないのに。
―それは、個人的に嫌いってだけでは?
若手撮り鉄(以下、若手) あと、知り合いに変なルートの切符を買うのが好きな「乗り鉄」(とにかく乗るのが好きな鉄オタ、夢は全線制覇)がいるんですけど、列車の経由するルートが多すぎると、コンピューターで印字できず、駅員が手書きで切符にルートを書き加えるんです。そいつは「路線名を手書きでたくさん書いてもらうのが楽しい」と言っていました。
―それは別に悪くないと思うけど、駅員さんは大変ですね。
若手 あと、「録り鉄」(列車の車内放送や走行音など、鉄道のあらゆる音を録音する鉄オタ)もヤバイ!
ベテラン この前、車掌に「発車メロディを長くかけて」と頼んで、あっさり断られた録り鉄がいたな(笑)。
若手 あいつら、ホームで長いマイクを使って録音したりするから、マジで邪魔ですよね。で、何がヤバイかというと、今年の3月に寝台特急「カシオペア」の上野発札幌行きの最終列車を遅らせた犯人は録り鉄だったんですよ。
―何をしたんですか?
若手 車内で不審物が発見されて、2時間ぐらい発車が遅れたんだけど、その不審物が実はカシオペアの音を録音しようとしたボイスレコーダーだったんです。
ベテラン 列車の運行に迷惑かけるのだけはダメだよな。
―ただ、過去に撮り鉄が線路脇に入ったせいで、列車の運行がストップしたという事件もありましたよね(※1)。
ベテラン 線路脇なら列車に接触しないから大丈夫…って昔は思っていたけど、今は厳しいね。線路に少し近づいただけで、すぐに列車が止まるんだもん。
(※1)2010年2月、大阪府内を走るJR関西本線・快速列車の運転士が線路脇にいる撮り鉄を発見し、緊急停車。車掌の退去警告を撮り鉄が拒否した結果、上下19本が運休、約1万3千人に影響した。
危くてもなるべく至近距離で撮影したい!
―なんで一部の撮り鉄は、そんな危険な所に入ろうとするんですか?
ベテラン なるべく至近距離で列車を撮りたいからだよ。それに、ちゃんとした撮り鉄は、この位置なら安全っていう距離を把握している。たまに線路内にも入るけど、時刻表を見て列車が走る時間を知っているから全然問題ない。最近は、列車がほとんど通らない田舎でもちょっと線路に入っただけで怒られるけど、「俺は素人じゃねえんだよ」って言いたくなる。
若手 僕は線路にギリギリまで近づくような危険なマネはしませんけどね。最近は踏み切りに監視カメラがあるし。
―鉄オタの中でも、撮り鉄ばかりが叩かれることについて、どう考えてます?
ベテラン やってることは昔から変わらないんだけどね。ネットのせいで、必要以上に注目されている感じがする。今はしょーもない正義感を満たしたいヤツらが、撮り鉄のやったことをいちいち鉄道会社に報告するんだよ。鉄道会社も無視するわけにはいかないから対応するよね。
昔は鉄道会社も気軽に俺らを受け入れてくれて、車庫内とか、駅員にひと声かければ撮影できたんだけど、今は難しくなった。
若手 まあ、SNSに撮った写真を上げたり、仲間と交流したり、ネットがあるから鉄道趣味を楽しめるという側面もあるんですけどね。
ベテラン 大体、ネットで叩いているヤツらは家に引きこもっているんでしょ? 北海道で除雪車を撮影するために、前日の夜から雪山で泊まり込むぐらいのことやってみろよ!
―…最近は女性の鉄オタも増えているそうですが。
若手 マスコミが「女子鉄」とか「ママ鉄」って紹介してますよね。一時は“出会い”を期待していたんですが、そんなコが撮り鉄界隈(かいわい)に来る気配は全くありません…。
ベテラン 何言っているの? 女のために撮影マナーを守ろうとか、そんな甘っちょろいこと考えてたら、鉄道仲間にバカにされるよ!
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悪い撮り鉄たちには彼らなりのスジがあるみたいだが、それが通用するのは仲間内だけ。やっぱり今後もお騒がせな存在であり続けるだろう。最後に、鉄オタのほとんどはルールをきちんと守る優良な人々であることも付け加えておきます!