打ちやすいバッセンもあれば、打ちにくいバッセンもある。言いかえればコスパの高い優良店と、コスパの低い劣悪店。さて、その見極め方とは…?

「なんで直球打席なのにフォークがいっぱいくるのー!?」「ベコベコに凹んだバット1本しか用意されてない! しかもジュニア用って(泣)」「危ないなぁ…5球に1球くらい危険球が飛んでくるんですけどー」

そんな目にあって1プレイ・200円を無駄にした経験がある人もいるはずだ。2000年代に入って施設数が急減しているバッティングセンター(バッセン)業界――その足元に目を移せば、営業努力に懸命な優良店舗と、サボり気味な店舗の二極化が鮮明になっているのが実情だ。

バットがベコベコだったり、グリップテープがビリビリに破けていたり…。特に利用者を泣かせているのが“ノーコンマシン”だ。

「ピッチングマシンは非常にデリケートなシロモノで、天候や気温、湿度によってコントロールがぶれてしまいます。常にボールが真ん中付近にいくよう従業員が定期的に調整しなければなりません。

また、バッセンではピッチングマシンの下にカーペットや人工芝を張っているケースが多いのですが、何年も張り替えずにびりびりに破けたような状態で使い続けていると、1球ごとに微妙にマシンがずれてコントロールが安定しなくなります」(バッティングセンターの企画・設計会社の幹部社員・A氏)

中には『直球・○km』という表示より明らかに遅い球しかこないバッセンもあるが…。

「屋外型のアーム式マシンにありがちですね。アーム式はバネの反動によってアームを高速で振り下ろし、球を放出する仕組みですが、バネを入れ替えずに伸びきったまま使っていると、球速は日に日に落ちていきます。それを放ったらかしにしているのでしょう」(前出・A氏)

屋内型でも、目の前の画面に映し出された投球フォームとズレまくったタイミングで球が飛び出てくるバッセンも一部で見受けられる。A氏がこう続ける。

「映像の後ろにあるのは、左右のローターを高速回転させるローター式マシン。マシンが老朽化すると回転力が弱まり、投球フォームと時間差で球が放出されるようになります。本来はメーカーにメンテナンスを依頼するか、新品に入れ替える必要があるのですが…」

性能が低すぎる劣悪なマシンも出回っていた…

扱っているボールの質もバッセンの良し悪しを左右する決め手となるのだとか。

「優良な店舗は年に何度かボールを入れ替えますが、劣悪な店舗はコストをケチって何年も使い続ける。ツルツルにへたったボールは摩擦や空気抵抗がおかしくなるのでコントロールが不安定になり、危険球が飛んでくることもあります。

一方、こだわるバッセンはJSBB(公益財団法人 全日本軟式野球連盟)公認の軟式球を使いますが、一部のバッセンでは安価なウレタンボールを使っています。寒いとボールの反発が鈍くなり、打球感としては重くなってしまう性質があります」

と、ここまでは、マシンをメンテしたり、ボールを定期的に入れ替えたりと店側のマメな営業努力でサービス向上が可能な範囲なのだが…。

関東圏の商業施設内で営業しているあるバッセンの店員がこうボヤく。

「同じビル内の他の店舗さんに配慮して、騒音が少ないエアー式のマシンを導入したのですが、正直、性能があまりよろしくなくて…」

エアー式マシン。前回記事『町工場発「ピッチングマシン革命」が苦境のバッセン業界を救う!』ではこの最新式製品を取り上げたところだが…。

実際、どう劣悪なのかをそのバッセンに確かめに行ってみた。読売巨人軍の某投手が映像に映し出された“直球専用打席”に入り、プリペイドカードを挿入。ウイーン!という機械音とともに放たれたその初球…

真っ直ぐに伸びてきた球はホームベース手前でギュリン!と外角へ…。直球のはずが、マー君並みの高速スライダーではないか。だが、次に投じられた球はド真ん中のストレート…かと思えば、3球目はフォーク! 4球目は高速スライダー! 5球目も高速スライダー! プロ級の球筋と配球に、もちろん記者は空振りの連続。こ、これは一体…?

「晴れの日は問題ないのですが、曇りや雨の日になると、ランダムにボールが変化しだすんです。メーカーには何度かメンテナンスをお願いしたんですが、問題は解消されません」

前回取材したエアー式マシンの製造元、共和技研の担当者がこう話す。

「その店のエアーマシンは当社製ではありません。メーカー名は言えませんが、一度その会社の担当者がウチの工場へ視察に来られ、数年後に類似品を製造されたんです。しかし、導入されたお店の社長から『なんとかしてほしい』とウチに電話が掛かってきまして。我々が他社の製品をいじるわけにもいかないのですが…参考までに現物を見させてもらったところ、騒音は多いし、球筋は安定しないし…性能はデタラメなものでした」

ここに取り上げたのはごくごく一部のバッセンに見られた例だが、球を打つ快感を味わうつもりが、逆にストレスをため込むハメに…なんて事態は避けたいもの。施設自体が激減する中、優良店と劣悪店を見極める目を養いつつ、快適なバッセンライフを送ってもらいたい。

(取材・文/興山英雄)