俳優・高畑裕太氏が起こした強姦致傷事件に、“えん罪”説が急浮上している――。

もし、自分が“合意あり”と思って性行為に及んだはずが、後になって相手女性から「無理やりされた」と言われたら…。

強制わいせつ事件などの刑事事件を扱う弁護士法人グラディアトル法律事務所には、そんな境遇に陥っている男性からの相談が毎月数十件舞い込んでくるのだという。前編記事に続き、後編では“強姦えん罪”を回避する手法を探る。

まず、男女間で合意のある・なしが真っ向から割れている場合、「合意はあった」とする男性側の主張はどうすれば認められるのだろうか。グラディアトル法律事務所の若林翔弁護士がこう話す。

「そこはどれだけ証拠が揃っているかによりますので、ケースバイケースです。逆に『合意はあった』と男性側が嘘をついている可能性もありますし、記憶があやふやなまま、自己防衛のためにそう言っているだけかもしれない。その点は詳しくヒアリングをしていけばある程度、見えてくることです」

と、いいますと?

「相談に訪れた男性でよくあるのが、最初は『合意があった』と言いきっていたのに、話を聞いていくうちに『たぶん、合意があったと思う』に変わり、そう思った理由を突っ込んでいくと『相手が抵抗していなかったから』『うなずいていたように見えたから』とトーンダウンしていく…。

それは男性側の主観でしかなく、女性側は密室の中、怖くて抵抗できかったのかもしれない。だとすると、男性側にそのつもりがなかったとしても、女性側から『合意はなかった』と言われれば警察は強姦罪もしくは準強姦罪(いずれも懲役3年以上)と判断するでしょうし、私もそれを前提に示談交渉を進めていくことが多いです」

示談となった場合、示談金は通常、どれくらいの金額になるものなのか。

「相手の女性が納得するかどうかなので相場がある話ではありません。50万円ほどで解決するケースもあれば、100万円になることもある。女性側が被害に遭った証拠がある程度揃っていれば、300万~500万円になる場合もあります」

第三者に知られたくない関係のリスク

一方で、確実に事前の合意があったにも関わらず、女性から意図的にふっ掛けられる男性も少なくないのだとか。

「最初から示談金や慰謝料目当てで近寄ってくる、いわゆる“美人局(つつもたせ)“の事案は出会い系サイトで目立ちますね。

中でも悪質なのが“妊娠詐欺”。過去には無理やりされて妊娠させられたと主張して胎児のエコー写真まで送ってくるのですが、調べてみると妊娠の周期が合っていなかったり、病院名を教えてくれなかったりするケースもありました。自分にやましいことがあると女性側も自覚しているから、警察に通報することもなければ、裁判に発展することはほとんどありません。

また、悪徳な風俗店(主にデリヘル、ホテヘル)では、お店に在籍するほとんどの女性キャストに本番行為をさせ、その裏には罰金をとるための専門スタッフがいる場合もあります。また、女性キャスト個人が毎回本番行為に誘導してはプレイ直後に『強姦したよね、通報してほしくなかったら罰金を払って』と要求してくる“当たり屋”のようなケースも…。

合コンなどの飲み会で知り合った女性や職場の同僚など一般女性の場合は、もともと良好だった関係がこじれた時にふっ掛けてくるケースが多く、特に奥さんや会社など第三者に知られたくない関係においてトラブルに発展する傾向があります」

では、確実に男女間で合意があった場合、男性側のその主張はどうすれば認めてもらえるのだろうか。

「合意の上で性交したとする、それ相応の証拠が必要です。例えば、現実にできるかどうかは別として、行為前のやりとりを記録した録音データがあれば動かぬ証拠となります」

じゃあ枕元にICレコーダーを忍ばせておいて…って、いやいや、それはマズイでしょ。

「もちろんマナー違反ですし、オススメはしません。風俗店でそれが発覚した場合、違法に当たるかどうかはグレーな部分ではありますが、お店側から『盗聴した』と言われれば罰金として損害賠償を請求されることがあります」

事後のメールが身を助ける証拠に?

こちらがローリスクで提示できる“動かぬ証拠”はないものだろうか。

「前提として、こうしたトラブルの渦中で動かぬ証拠というのはなかなか集めづらいものです。ただ、強姦事件が起こり得ない良好な関係を示す証拠があれば刑事事件で不起訴になったり、示談金をゼロにしたり軽減するだけの有力な証拠になる可能性はあります。

例えば、仲良く肩を組んでホテルに入っていくところを目撃していた証言者や、性行為直後に『今日はありがとう』→『こちらも楽しかったよ、またね』といった携帯メールの文面などがそれに当たります。そのため、LINEやメールなどのやりとりはできるだけ残しておいたほうがいいでしょう」

目撃されるのもそれはそれで問題が…(苦笑)。行為後に送る“優しく楽しげなメール”も自己防衛策につながるとはいえ、関係によってはそれこそリスキーでは…。

「といっても、確実ではありません。メールを送ったところで返信がなければ証拠価値は薄れてしまいますから」

なんだろう…合意の下で関係に及んでも、相手女性に「合意はなかった」と言われてしまえば“もうお終い”に思えてくるこの絶望感は…

「事前の合意の有無で関係がこじれる場合というのは、お酒に酔った勢いで無理やり行為に及んだり、最初に合意があっても『これはやっちゃダメよ』と言われているにも関わらず、欲望に任せてその一線を超えてしまったり、性行為後にやり捨てをしてしまったり…。

要は、女性の“怒り”が発端になっているケースが多いんです。つまり、女性を大切にして、怒らせるようなことをしない――それが、事後のトラブルを回避する一番の防衛策です。

一方で、デリヘルやホテヘルなど本番行為が禁止されている風俗店の中には悪質店もありますので、相手から本番を求められてもルール順守で楽しむことです」

身を滅ぼしたくなければ、真っ当なセックスライフを貫くしかない…ということだろうが。それすら難しい、なんとも世知辛い話というしかないのだろうか?

(取材・文/週プレNEWS編集部)