残業の理由としては、「仕事量が多すぎる」(46.7%)、「人手不足だから」(31.5%)、「突発的な仕事が入ることが多い」(30%)と職場環境や仕事の性質を挙げる人が多く、「自身の効率や要領が悪いため」(12.6%)といった自分の能力を問題視する回答は少数派だった

昨年12月、電通に勤務していた高橋まつりさん(当時24歳)が過酷な労働に耐えかね、社員寮の4階から身を投げて命を絶った。遺族が申請していた労災認定が下りたのが先月30日のことである。

実は、国や労働基準監督署(以下、労基署)は近年、かつてないほど「残業削減」に取り組んでいた。例えば労基署は2014年9月より、主に月100時間超の残業が行なわれていたり、過労死などの労災請求が行なわれた事業所を対象に監視体制を強化している。

また、企業も「ノー残業デー」や「1日6時間勤務」を取り入れるなど、残業を減らす試みは広がりつつある。

しかし「残業問題」の難しさは、たとえ会社が残業対策に熱心に取り組んでも、従業員が長時間労働から解放されるとは限らないということだ。ここではファミレスチェーン「すかいらーく」の店長の事例から解説しよう。

同社は退勤から次の出勤までの間隔を12時間以上空け、社員の休息時間を確保しようと『インターバル制度』を実施している。

店舗の出退勤はすべてICカードによってデータ化され、本部に自動転送される。本部は毎月、各日のデータをもとに、退勤→出勤の間隔が12時間未満の社員をリストアップ。どこの店の誰がいつ、なぜインターバルを確保できなかったかを個別に分析して、当該店舗の店長やエリアマネージャーに対策を取らせる。これを毎月、繰り返しているのだ。

「休め」という労基署と会社、「残業せざるをえない」従業員

だが、すかいらーく系チェーン店の店長・B氏はこんな不満を漏らす。

「その徹底ぶりが、現場の負担になってしまっているんですよ。フツーに働けば、月の残業はゆうに100時間を超えるのがファミレスの店長。でも、エリアマネージャーからは『60時間に押さえろ!』とプレッシャーをかけられる。月の残業が60時間を超えそうになると、全然休める状況じゃなくても勝手にシフトから名前を消されることもあります」

会社がどんなに残業を禁止しても、シフトが手薄な時間帯に、店長が現場を離れるわけにいかない。

「そこでやむをえず、出勤してから2時間後や、退勤の2時間前にカードを通して、データ上の僕の存在を消すわけです。これは、店長なら誰でもやっていたことだと思います」

しかし、会社もその実態に気づき、すぐに次の手を打ってきた。

「店長はシフト管理などの事務作業を行なうため、出勤したらまず店内のパソコンを起動し、退勤時に電源を落とすんですが、会社はパソコンの操作履歴データも管理するようになりました。そこでカードで通した出退勤時刻と、PC上の時刻に時間差がある場合は“不正打刻”と見なされ、ボーナス査定の減点対象になります」

だがその後、店長たちはさらに新しいウラ技を生み出した――。

「休め」という労基署と会社、「残業せざるをえない」従業員の、あまりにこじれた、熾烈なイタチごっこ。その行方は? 本当の問題はどこにあるのか? 解決策はあるのか? 詳しくは発売中の『週刊プレイボーイ』45号でご覧ください。特集ではサラリーマン男性1000人アンケートの結果も公表!

(取材・文/興山英雄)

■週刊プレイボーイ45号「電通過労自殺から本気で考える 俺たちの『残業白書』」より