先日、とんねるずの石橋貴明がMCを務めたバラエティー番組『オール芸人お笑い謝肉祭』が放送倫理・番組向上機構(BPO)の審議対象となったことが話題となった。BPOによると、視聴者からこんな苦情が入ったことが審議入りを決定した理由だという。
「男性が男性の股間を無理やり触る行為などがあった。内容が下品。子供に説明できないような番組はやめてほしい」「裸になれば笑いがとれるという低俗な発想が許せない」
その気持ちはわからなくもないが、TV業界だけでなく、こうした主張が“苦情”と化すことが増えている。その苦情自体が“過激化”し、現場を混乱させている点も最近の傾向だ。取材を進めると、様々な業界から悲鳴が挙がってきた。
■小学校教諭 保護者が「徒競走にビデオ判定を導入しろ!」
「小学3年の徒競走で、ある組がゴールした直後、生徒の母親がスターターの先生に詰め寄り『ウチのコのスタートが遅れたからもう一度やり直してください!』と猛抗議。同時にゴール地点では別の子の父親が『ウチのが先にゴールしたのになぜ2位なんだ! 写真判定はないのか!?』と(苦笑)。同時多発で2件の“苦情”が発生したことで現場は収拾がつかず、運動会は一時中断となりました」
これでは学校の先生も疲弊する一方…。クレームではないが、こんな無理難題を突きつけてきた保護者もいるという。
「小学4年の女子生徒の両親が校長室にやって来て、『ウチの子供は将来ピアニストにするから〝絶対に校内で指に怪我をさせない〟と約束してほしい。ついては、念書も書いてほしい』と申し出てきました。そんなの突っぱねればいいのに、校長と教頭はそれを学年主任と担任を呼んで職員会議を開き、バカ真面目に協議を始めて…。こんなことをしているから、無駄な作業が増えて教師が疲弊していくんです」
パンティの洗い方で訪問介護は大混乱
■介護士 「下着の洗い方が悪い!」でたびたび担当スタッフの変更を要求
「要介護者の自宅で作業をする訪問介護でクレームが多いのは生活援助です。生活援助は家事手伝いのことで、『ご飯が不味い』『ゴミが落ちてる』『トイレが汚い』など、いろんなクレームが発生します。
あるお宅でのこと。下半身マヒで車いす生活を送る50代の女性で、異常に下着にこだわるお客様でした。着用する下着はいずれもヒラヒラのレースがたくさん付いた高級ランジェリー。担当スタッフが初めて訪問すると、まず『下着の洗い方』をみっちり教わります。生地に負担を与えないよう、優しくもみ洗いをするのが決まりです。
最初についた介護スタッフは3日目にクレームが発生。『下着の扱い方が荒い。心配でならない』という理由で『担当を替えろ』と要求されました。2人目の担当は2週間ほどこらえましたが、『下着の干し方が悪い。乾きも悪い』などの苦情が重なって担当を替えろ、と。
その後、同じことが2度あって担当替え、最後には営業所のエースで、その完璧な仕事ぶりから『介護士のミタ』(松嶋奈々子主演ドラマ『家政婦のミタ』にちなんで)と所内で呼ばれているベテランスタッフが担当。本来なら寝たきりの方や認知症の症状が重い方など、仕事が難しい現場に入っていてほしいスタッフなんですが、お客様が『営業所の対応が悪すぎる。市役所や厚労省に報告するぞ!』なんて言い出したものですから、無理やりシフトを組み換えざるをえませんでした。
しかし、3ヵ月ほど経ってやはり…『下着が縮んでる!』『毛玉ができた!』と苦情が入るようになり、担当を替えろと(苦笑)。もう派遣できる人材がいなくなったので、ケアマネージャーに事情を説明し、契約を解除させていただきました。ケアマネによると、そのお客様は典型的な常習クレーマーで、半年もったウチの会社は『すごい!』と(苦笑)。無理難題を押し付けられてギブアップした介護事業者は数多く、1年で10社ほど転々としているそうです」
★発売中の『週刊プレイボーイ』Nо.47の特集記事『クレーム大国ニッポンに異議アリ!』では、さらに悲惨なクレーム地獄の現状をリポート。悪質クレーマーを撃退する方法まで特集。そちらも是非ご一読いただきたい。
(取材・文/週プレNEWS編集部)