鉄道とバスのいいとこ取りをした未来の乗り物「デュアル・モード・ビークル(DMV)」がついに日の目を見るか!? 開発していたJR北海道の経営悪化で約2年半前より研究がストップしていたが、このほど北海道の日高本線で走らせようという計画が浮上しているのだ。
日高本線は高波被害で2015年1月より鵡川(むかわ)~様似(さまに)間(116km)が不通に。もともと利用客が少なく、復旧費が86億円かかることから、2月18日に行なわれた日高線沿線自治体協議会で、JR北海道はこの区間をバスなどに転換する方針を伝達。それを受けて、沿線の7町長は代替交通としてDMVを検討することとなった。
協議会メンバーで、DMVの導入を提案した、新ひだか町の酒井芳秀町長が言う。
「せっかく線路の復旧工事をしても、また高波にやられる可能性があり、被害の大きい区間は諦めようと。でも、ほかは線路が残っているし、DMVが最適じゃないかと考えたんです」
DMVはマイクロバスに列車用の車輪を加えた乗り物で、普段は渋滞のない線路を走行。駅から離れた場所へは車輪を収納し、そのまま道路を走れてしまう。
鉄道ファンとしても知られ九州新幹線の発車メロディも作曲した、元「カシオペア」の向谷実(むかいや・みのる)氏が、開発中のDMVに乗ったときのことを話す。
「線路の上をスーッと流れるように走るんです。鉄道でもバスでもない不思議な感覚。そして線路から道路へ出るのに、10秒ぐらいでモードチェンジできちゃう。すごい技術だなと思いました」
現在、日高本線の不通区間は、鉄道の代わりに国道を走るバスがある。一部の地元住民から「もう線路はいらない」との声もあるが、酒井町長はこう語る。
「鹿児島まで線路が続いてるということが大事なんです! そして線路があるから地元に人が来る。DMVは鉄道ファンが注目していて、人が集まる! 観光面でも期待しています」
このほか、DMVは徳島県が第三セクターの阿佐海岸鉄道で走らせようとするなど、“ローカル線の救世主”と期待されている。
ただし、運転には鉄道とバス両方の免許が必要で、駅のホームと乗降口の段差問題や信号の改修など課題も少なくない。前出の向谷氏もこう心配する。
「トイレです。今までの鉄道車両はトイレ付きでしたが、DMVはバスを改造するので設備がない。例えば、日高本線は鵡川から様似まで約4時間。トイレがないのは不安です」
意外なところでミソがつきそう? 未来の乗り物DMVは無事に出発できるか。