3Dテレビ、全社で販売終了へ――。韓国のサムスン電子が2010年2月に発売して以来、世界中の家電メーカーがこぞって生産してきた3Dテレビが、その役割を終える。
一時は業界の売り上げ低迷を救う救世主として、鳴り物入りで投入されたものの、販売が振るわず、メーカーは次々と撤退。最後まで生産を続けてきたソニー、LGも、ついに2017年度中に販売を終了すると発表した。わずか7年の短い生涯だった。
いったい、なぜ3Dテレビはこんなにも売れなかったのか? 業界関係者の証言をもとに振り返った。
・そもそもソフトが充実しなかった(テレビ局プロデューサー) 「09年に映画『アバター』のヒットがきっかけで、家庭用のテレビに3D機能が追加されることになったんだけど、ふざけんなって思いましたよね、マジで。ジェームズ・キャメロン監督みたいに予算を好き放題使える人って、世界に数人しかいないわけよ。普通のテレビ番組程度の予算じゃ、いくら3Dだっていっても、ハンパなもんしかできないわけ。
だいたい、当時はアナログ放送から地上デジタル放送への移行期で、各局は巨大な設備投資にヒーヒー言ってた。3Dにかける金なんてどこにあるんだよ!って話ですよ。結局、『ハードを作ればソフトは勝手に増えるだろう』というメーカー側の希望的観測だったってことだよね。
そしてトドメの一撃は、2020年の東京五輪。『テレビ放送を4K、8Kへ!』っていうのが国策でしょ。各局ともその技術移行が最優先課題。もう3D番組制作なんて、完全に出る幕がなくなっちゃった」
出だしがピークで、ずっと右肩下がり
・とにかくハードルが高いし、3Dメガネも高い(大手家電量販店の販売員) 「正直、3Dテレビ人気のピークは『アバター』の3Dソフト発売への期待が高まっていた2010年でしたね。出だしがピークで、ずっと右肩下がりだったんです(苦笑)。
正直、こんなに売りづらい規格はないですよ。ブルーレイの3D動画を見るには、3D対応テレビ、3D対応ブルーレイデイスクプレイヤー、そしてハイスピード対応のHDMIケーブルが必要です。ハードル高すぎますよね。で、やっとそれらをクリアしても、3Dメガネがないと見られない。なのに、3Dメガネがバカみたいに高いんですから!
ソニーやパナソニックを筆頭に、各メーカーは液晶アクティブシャッター方式の専用3Dメガネを発売しました。ですが、どれも1個1万円オーバーですよ! 家族4人分なら5万円コース! しかも重くてカッコ悪い。
映画館で売られているパッシブ方式の3Dメガネって、1個100円程度なんですよ。それを考えたら、1万円なんてバカバカしいですよね。後に各社ともパッシブ方式の3Dメガネを発売し、価格は1個数千円に下がりましたが、それでも高すぎるし、時すでに遅し、でした」
(取材・文・撮影/近兼家)
■週刊プレイボーイ8号「追悼特集 さよなら、カッコ悪いメガネ。僕たちは3Dテレビを忘れない(棒」より