今、鉄道業界では、座って通勤や帰宅ができる、“通勤ライナー”が空前のブームだ。
3月に西武鉄道で地下鉄直通の「S-TRAIN」がデビュー。東武鉄道は4月から「スカイツリーライナー」と「アーバンパークライナー」の運転を開始。関西では京阪電鉄が全席指定の「ライナー」を8月に導入。さらに2018年には京王電鉄で、新宿と京王八王子、橋本を結ぶ通勤ライナーが登場予定だ。
朝の満員電車は疲れるだけでなく、痴漢に間違われたりするリスクもある。それを回避できる通勤ライナーの存在はありがたい。そんな便利な電車がなぜ、この数年で急増したのか。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏はこう分析する。
「首都圏、関西圏の鉄道路線の朝のラッシュ時の混雑率と運転本数が記された『平成26年版 都市交通年報』を見ると、多くの路線で混雑率が減少しています。混雑率が横ばいの路線もデータをよく見ると、運転本数や一本の電車の車両の数を減らして混雑率をキープしています。つまり、郊外から都心へと通う通勤客が減っているのです。利用者が減れば、鉄道会社は収入が減るわけですから、座席指定券で稼げる通勤ライナーをつくろうという流れになる」
また、昭和の時代から行なわれてきたプロジェクトも関係しているようだ。
「今から40、50年前の高度経済成長時代、通勤ラッシュは大きな問題でした。そこで鉄道各社は、線路を複線から複々線化するための工事に着手しました。その工事がようやく終了し、たくさんの電車を運転できるようになりましたが、利用者が減って電車を増やす必要がなくなった。そこで、ラッシュの時間帯に通勤ライナーの運転を始めたのではないでしょうか。各路線とも『座って通いたい』というユーザーの声はありますから、利用者にとっても客単価を増やせる鉄道会社にとっても、通勤ライナーはいい列車だと思います」(梅原氏)
取材・文/渡辺雅史(リーゼント)