最近、店員からガンガン話しかけられる接客は苦手と思っている“コミュ障気味”な客が増えているという。
そんな内向き傾向のニーズに応えるように(?)、今年5月にアパレルショップの「アーバンリサーチ」が“声かけ不要バッグ”を導入。ネットなどでは「これは助かる!」「待っていました」など、支持する声が相次いだ。
果たしてこういった試みは、今後増えていくのか? 実際のところ、接客現場は何を思っているのだろうか?
* * *
―「アーバンリサーチ」の声かけ不要バッグに関して、どう感じましたか?
Cさん(アパレル店員 男・32歳) そもそも「アーバン」のようなセレクトショップは、積極的に店員が声かけしないブランドです。なので「なぜアーバンが?」という疑問がまずありました。
しかも同じようなサービスは10年前にも髙島屋の一部店舗であったんですよ。「S.S.E.(シー)カード」というもので、これを首からかけて買い物をすると、店員は声かけできません。実はその髙島屋で3年勤務していましたが、その間それをかけているお客さんを見たのは1度だけですよ。しかもカードに気づかないフリをして、声かけちゃいましたし。
―これはヒドイ(笑)。実際、接客によって売り上げはかなり左右されるものですか?
Cさん それがすべてと言っていい。今アパレル業界は本当に厳しくて、特にうちみたいな中堅ブランドは気合いを入れて接客しないとまったく売れません。何もせずに服を買ってくれるお客さんなんて、100人にひとりくらい。
ユニクロなどのファストファッションは積極的な接客をしませんが、あの値段だから成立するんです。だからいくらコミュ障時代でも、数ある中堅ブランドで声かけ不要アイテムが定着することはないでしょう。
Aさん(美容師 男・33歳) 美容業界でも人気の美容師は、ガンガン話しかけるタイプが多い。こんな時代でも積極的な接客をする人のほうが、確実に数字を残します。あと美容室って静かすぎると、お客さんに活気がない店だと思われてしまいます。だからこっちも適度な話し声をキープする必要があります。
―つまり美容室でもある程度声かけをしないと、売り上げが落ちてくると?
Aさん そうですね。ただお客さんの価値観もさまざまなので、話題には気を使う必要があります。そうなると天気の話など当たり障りのない会話になりますが、便利なのが“旬な芸能ニュース”。
例えば「にゃんこスターのふたり、付き合っているらしいですね」とか、出たすぐのタイミングでぶつけると、たいてい「マジですか?」と食いついてくれる。それに備えて常にレジ横のパソコンで、ヤフーニュースはチェックしています。
(取材・文/高山 惠[リーゼント] イラスト/服部元信)