東芝のスポンサー撤退報道を受け、番組の継続に疑問を投げかける声も。ただ、視聴率は一時落ち込んだものの今年に入ってからは安定しているという。
タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!
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経営不振にあえぐ東芝が『サザエさん』のスポンサーを降板?との報道に「いっそ終わらせてしまえ」とネットが盛り上がっています。48年間も放送されている国民的アニメ番組。3世代同居家庭の専業主婦が主人公という設定は時代錯誤で、昭和の庶民どころか、バブルの薫りすら感じるとの声も。
確かに、波平は通勤圏に一家7人が住む一戸建てを所有、マスオは住宅ローンの心配もなく、家計を背負うプレッシャーとも無縁のラッキー男。サザエは気楽な実家暮らしで、毒親問題が取り沙汰される世間をよそに、両親との関係も極めて良好。働きたいという鬱屈も、働かざるをえない事情もありません。
タラちゃんは丁寧語を使いこなす良い子で育児の悩みはなさそうだし、カツオとワカメもいじめや不登校の兆しナシ。男女の役割分担が明確で父権的な家族像に、現役世代はドン引きです。
いっそ波平が倒れ、マスオは勤務先の不祥事で年収が激減、サザエが働きに出るもタラちゃんは保育園に落ち続け、カツオが部屋に引きこもったところへフネの不倫が発覚という現代版で再出発したらどうでしょう。それも憂鬱(ゆううつ)な週末ですが。
小島のひとり言 日曜の夕方に『サザエさん』を見ると気持ちが落ち込む「サザエさん症候群」。私も幼い頃を思い出します。明日から学校かあというあの気分。提供画面で踊るサザエとタマ…ああ、なんだかどんよりしてきた…。
●小島慶子(こじま・けいこ) タレント、エッセイスト。テレビ、ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動する、日豪往復生活。近著に『ホライズン』(文藝春秋)、『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)など。