「重大インシデント」から、わずか1ヵ月で立て続けに車両トラブルが発生した新幹線。一体、背景に何がー? *写真はイメージです

JR西日本が所有する新幹線で車両トラブルが相次いでいる。

昨年12月11日には「のぞみ34号」の台車に長さ14cmの亀裂が見つかり、新幹線として初めてとなる「重大インシデント」に認定された。

さらに、そのわずか1ヵ月後の1月16日には東広島-三原間を走行中の「のぞみ20号」で異音トラブル、新倉敷駅を出発直後の「こだま741号」で異臭トラブルが立て続けに発生した。

開業以来、「死亡事故ゼロ」を誇り、絶大な信頼を勝ち取ってきた新幹線。これまで築き上げてきた「安全神話」がぐらつく背景には、いったい何があるのだろうか?

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「重大インシデント」発生からわずか1ヵ月にもかかわらず、JR西日本管内で車両トラブルが頻発。事態は何も改善されず、むしろ悪化しているようにも思えるのだが……。新幹線やJR各社の実情に詳しい鉄道ジャーナリストの梅原淳氏が解説する。

「実は異音や異臭といった車両トラブルはこれまでも起きていました。時速300キロ近い高速で走行しているので異音は生じやすく、潤滑油の過熱や空調の加減で異臭も発生しやすい。昨年12月に『重大インシデント』を起こしてしまったために、JR西日本では異音や異臭が認められた場合、より厳格に車両を停止して確認するルールを定めました。一日に2本も運行停止したので大きく報じられましたが、むしろ素早く対応できたといえます」

梅原氏は「そもそも検査体制にこそ不備がある」と警鐘を鳴らす。

「現在、のぞみ34号の台車亀裂に関する原因を究明中ですが、そもそも十数年も運用している車両の金属疲労は致し方ないし、機械的な寿命もある。のぞみ34号に用いられていた車両は累計走行距離が数百万kmともいわれていますしね。台車を対象にした重要部検査は1年6ヵ月ごと、または走行距離60万kmごとに行なうことが定められていますが、過酷な環境で走行していた車両は検査周期をもっと短くする必要があるかもしれません」(梅原氏)

「安全神話」と評されるほど信頼性の高い新幹線だが、重要部検査以外の日常的な検査では意外にも特別な技術を用いたり、細かな点検が行なわれていたりするわけではないという。

「例えば、『亀裂を起こさないこと』が目的ではなく、『亀裂があっても、それにいち早く気づいたり、危険な状態になる前に修理したりすること』を目指して対応します。

JR西日本は台車に亀裂が生じた車両は検査を受けたばかりだと説明しましたが、実際は部品を取り外したり分解したりして検査をしたのではなく、ほぼ目視だけという内容でした。これまで約半世紀もの間、『安全神話』が続いてきたことはよいことですが、見直しは必要でしょう」(梅原氏)

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(取材・文/羽柴重文)