三菱東京UFJ銀行などを傘下に持つMUFGが設立する仮想通貨取引所が論議を呼んでいる。
今はネット上で取引できるビットコインなどの仮想通貨を利用すれば、手数料ほぼゼロで送金・決済ができる時代。そうなると困るのが銀行だ。現在は国内送金にも数百円の手数料が必要で、外国送金となると1万円を送るのに数千円の手数料を取られることもしばしばだが、これでは消費者はどんどん仮想通貨を利用するようになってしまう。
そこで危機感を強めたMUFGは、自ら仮想通貨「MUFGコイン」を発行し、その取引所を今年中にも設立すると発表したのだ。
だが、この決断に対して「愚策では?」との声もある。ITジャーナリストの三上洋(みかみ・よう)氏もこう首をひねる。
「ビットコインのように価格が乱高下するのを嫌い、1MUFGコイン=1円にペッグ(固定)しようという構想は疑問です。仮想通貨は価格が変動するから、売買が増えて普及した。それなのに、1MUFG=1円に価格を安定させ、しかもMUFG取引所でしか取り扱わないというのでは、仮想通貨ではなく自銀行内の決済のみに使える電子マネーにすぎず、『Suica』や『Edy』と変わらない。
世間では『メガバンクが仮想通貨の発行に乗り出した』と騒いでいますが、私の周辺では『誰がこんなしょぼい仮想通貨を利用するんだ?』という声がほとんどです」
いずれは仮想通貨戦争に打って出る!
一方、「1MUFGコイン=1円の固定制は立ち上げを安定させる戦術。いずれは仕組みを整えて顧客を増やし、仮想通貨戦争に打って出る」と予言するのは経済ジャーナリストの須田慎一郎氏だ。
「リアルキャッシュではなく、仮想通貨を利用して決済をスマホで済ませる時代になることはMUFGもよくわかっているはず。だからこそ仮想通貨の取り扱いに乗り出したわけで、いつまでも固定にしておくはずがない。いずれはビットコインのように価格の変動を認めるはずです」
その証拠として須田氏が指摘するのが取引所の存在だ。
「固定なら取引所でなく交換所で十分。将来、価格の変動を認める予定だからこそ、取引所と銘打っているわけです。おそらく今後は、MUFGコインを普及させるためにZOZOTOWNなどの人気ショップでも手数料ゼロで利用できるようにするでしょう。その意味では、MUFGはまずはビットコインなどの仮想通貨よりも『LINE Pay』や『アリペイ』などの決済サービスをライバル視していると考えています」
仮想通貨取引所設立は吉と出るか凶と出るか。国内最大手のメガバンクの今後の動きに注目したい。
(写真/時事通信社)