電動アシスト付き自転車で、記者自らが体験し検証! 乗ったのはブリジストンのBikke(ビッケ)。タイヤが20インチで車高が低く、またぎやすさ重視。タイヤ幅が5センチ前後のため走行に安定感があった

自転車は自分で持つ時代から、レンタルする時代に!?

東京都内・千代田区、中央区、港区…と歩いていると、赤いボティの電動アシスト自転車に乗るビジネスパーソンをよく見かけるようになった。NTTドコモが2014年10月から来年3月まで東京や横浜、仙台などの自治体と共同で行なっている、レンタルサイクルこと“コミュニティサイクル”の広域実験利用者だ。

コミュニティサイクル事業は企業にとってうま味があるのか、昨年9月にはメルカリの子会社のゾウゾウもシェアサイクル事業参入を発表、2月27日より福岡県にてシェアサイクルサービス「メルチャリ」を開始する。

また、コンビニ最大手のセブン-イレブンがソフトバンクと共同でシェアサイクル事業参入を12月に発表。コンビニの店舗を拠点にした自転車の貸し出しサービスを2018年度中に開始。約1千店で計5千台を置く方針という。目下、各業界から参入ラッシュが続きそうな模様だ。

しかし、現在の運営エリア外にいる者からしたら、利便性や利用方法がわからないのが実情だ。大手企業を魅了するコミュニティサイクルとは? 乗って検証してみた!

現在、NTTドコモが千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区、江東区の7つの東京の自治体ほかと共同で行なっている「コミュニティサイクル」事業。

自転車をレンタルするシステムは、まず利用したいエリアで会員登録することから始まる。登録後、ポートと呼ばれる置き場まで行き、自転車を借りて同じポートもしくは別のポートに返却をするだけだ。会員区分・料金は下記のようになっている。

●1回会員:基本料0円、最初の30分が150円。1回の利用が30分を超過した場合は30分毎に100円。利用可能時間は24時間。

●月額会員:基本料金2千円(月額)、最初の30分が0円。1回の利用が30分を超過した場合は30分毎に100円。利用可能時間は24時間。

●1日パス:1500円(有人窓口でパスを購入の場合は専用ICカード発行料で+500円)。購入当日の23時50分まで利用可能で、当日返却の場合は超過料金不要。

1日パスは現金かSuicaやPASMOなどの交通系ICカードでの決済が可能だが、他ふたつはクレジットカードかドコモのケータイ払いだ。というのも、ふたつの会員登録は全てオンライン。そこで早速、週プレNEWS編集部のある千代田区コミュニティサイクル『ちよくる』に登録した。

まずは「自転車シェアリング広域実験」のサイトにアクセスし、編集部のある千代田区のコミュニティサイクル『ちよくる』をクリック。

「自転車シェアリング広域実験」のサイト

会員登録画面に入り、規約に同意した後に登録スタート。英語併記なのは外国人観光客も視野に入れてか? 会員区分の選択、連絡用のメールアドレスなどを入力していく。

登録は簡単。NTTドコモが運営しているだけに、dアカウントを持っているとパスワードが紐付けされ、支払いは月々のケータイ代と一緒になることから管理もラクそう。クレジットでの決済も可能だが、エリアにより交通系ICカードやFeliCaなどを会員証として使用することもできる。

会員登録画面

今回のレンタル目的は「観光」。編集部のある神田神保町から上野へ行くことにした。東京観光であれば下町散策。さらに、定番の上野動物園、人気の喫茶店「カバヤ珈琲」を回ってみようというわけだ。上野・日暮里・根津の中間地点にそれぞれ点在し、歩いてアクセスするには遠いため、電動アシスト自転車でスイスイいこうという魂胆だ。

早速、編集部から近いポートで自転車を借りた!

自転車をセレクトする前に必ず確認!

昼近くの千代田区内のポート。14台中8台がレンタルされていた。借りるための手順は下記の流れになる。

①会員サイトにログインして利用予約②利用するポートを選択③利用したい自転車の番号を選択して、パスコードを取得

③までの手順を行なうと、登録したメールにパスコードが届く。番号を自転車の操作パネルに入力すれば、利用準備は完了だ。

「MNT」の後に並ぶ数字が千代田区の場合の自転車の番号。その上の数字パネルにパスコードを入力する。

手順通りに行ない、レンタルした自転車に乗ろうとバッテリーに電源を入れたところ…電池残量が17%という悲劇。ビックリ!だ。電動アシストがなければ、ただの重い自転車。車体変更しようか迷ったが、新規にレンタルということで余計なお金が必要になるのではと思ったのと、記者の愛車はブリヂストンの重めの自転車ゆえに、体力に自信あり! なんとかなるだろうとそのまま利用を決意。必要な場所でのみ電動アシストにスイッチを入れることにした。

しかし、充電がフルではない自転車が紛れているのは利用者にとって不便では? 鼻息荒くメンテナンスについて運営に問い合わせたところ、充電は夜間のみで基本的に昼間は行なっていないとのこと。さらに利用前点検として「充電」や「パンクの有無」を確認することと利用規約に記載があるそう。読んでなかったこちらの落ち度なのか…(意気消沈)。

バッテリー残量、パンクの有無は利用したい自転車番号を入力する前に必ず確認!

気を取り直して、上野動物園まで。バッテリー残量を気にしながら水道橋駅脇の外堀通りで電源を入れる。約750mの坂道で、普通の自転車では立ちこぎでもキツい場所のためだ。さすがに電動アシストがあるとラクなのだが、ここで一気にバッテリーの残量は6に! 先行きが思いやられるが、バッテリー節約モードで行くしかない。気分を盛り上げて自転車を自力で漕ぐことにした。

文京区本郷周辺の観光スポットのひとつ『日本サッカーミュージアム』。上野までのルートの近くのため、自転車の機動力を生かして寄り道してみた。

日本サッカーミュージアム

上野駅・上野公園入り口の改札へと繋がる坂道は急で、普通の自転車であれば頂上付近では気合いを入れても上りきるのが厳しい。しかし、電動アシスト付き自転車のおかげでラクラク。バッテリー残量はたった5に。

上野駅・上野公園入り口の改札へとつながる急坂

上野恩賜公園内の自転車置き場に停めると、登録アドレスに「施錠の確認」メールが届いた。施錠するたびにメールが届くシステムだ。

「施錠の確認」メール

コミュニティサイクルという選択肢が増える?

さぁ、上野動物園! ちょうどリーリーが運動場に出ていて食事のタイミングに遭遇。久々に間近で見たパンダに興奮してしまった。残念ながら、話題の子パンダ・シャンシャンは見逃してしまったが、駐輪場へ戻ると、自転車を停車していたのが功を奏したのか? バッテリーが不思議なことにレベル13まで復活。なんだか心に余裕が出てきた。

上野動物園のパンダのリーリー

続いて、『カバヤ珈琲』へ。たまごトーストは、とろ~り玉子がオンでヴィジュアルがインスタ映え抜群。バターの香りが食欲をそそる。編集部のある千代田区神田神保町から歩きたくはない。

『カバヤ珈琲』のたまごトースト

借りたポートに戻った時点でバッテリー残量は9。減ったり増えたりの理由がわからなかったが、約6時間の東京下町散策観光が終了。歩きであれば絶対行かないような場所にも行けたため、なかなか楽しかった。走行距離は約9.7キロ。キツい坂道は電動アシストを使用したせいか、強い疲労感は感じなかった。

サイクリングも終了。返却方法を記したメールが登録アドレスに届く。そして、翌日にポート内にて「一定期間返却操作がなされなかった」ため、運営により自動返却手続きが行なわれたというメールを受信。改めて返却方法を『ちよくる』で確認をしたが、もしかして「ENTER」ボタンを押してなかったのか?

返却が完了していれば「返却確認メール」が届くのだが、返したと思っていたためメールの存在を確認していなかった…。ただ、料金を計算したところ、自動返却手続きまでの時間まで加算されておらず、ひと安心。失敗をリカバリーしてくれてありがたい。

返却方法を記したメール

最初から最後まで全く使いこなせていないダメダメな記者だったが、そんな利用者を想定してか、痒いところに手が届くシステム。ところで、日常的にはどんな人が使っているのだろうか? 今回、利用した千代田区のコミュニティサイクル『ちよくる』に聞いてみた。

千代田区は会社が多いため他区に比べて法人利用も多いらしいが、最も多い利用区分は「1回会員」で約9割を占める。15年に『ちよくる』が取ったアンケートでは「1日パス」での利用者は買物や散策に使っているという結果が出たとか。今回の体験のように散策で使っている利用者もいるようだ。

しかし、街中でよく見かける利用者たちは、プライベートというよりビジネスっぽい。歩くには少し距離のある取引先へ行く、駅から遠い会社へ最寄り駅から乗るなど仕事の移動に便利に使っているのだろう。

登録さえすれば、行った先で便利に使えるコミュニティサイクル。自転車ブームの頃のように、わざわざ自宅から会社まで長距離を自転車で移動する必要もなく、その利便性に気づいた人も多いのか、実績は右肩上がりだという。

『ちよくる』では、運用がスタートした14年10月の利用回数はわずか6617回だったが、3年後の17年10月には6万854回と約10倍の成長率。その時点での登録数は約5万3千件というから、追随して大手企業が参入するのもわかる。事業として、かなりのポテンシャルを持つとの判断だろう。

参入業者が多くなれば、駐輪場拠点も増えて、利便性はさらに向上するはず。初回ではまだシステムを理解し切れずとも、1度体験すれば便利に使えそうな印象を受けた。記者も仕事柄、取材で毎回異なる場所へ行くのが常だが、駅から遠い場合もある。タクシーを利用しようと思っても、待っている人が多ければ遅刻しないために歩くしかなかった。

後発企業がどのようなシステムを採用するかまだわからないが、「1回会員」でその都度、支払いがあれば、複数に登録して恵比寿ではA社、六本木ではB社のように使ってもいい。電車で移動できなければ、次はタクシーという2択から、状況によってコミュニティサイクルという選択肢が増えることに少なからず魅力を感じることができた。

今後、競争によって、さらに創意がなされ、企業と利用者のウィンウィンの関係になるか?

(取材・文・写真/渡邉裕美)