全長は3~4cm。羽化の時期は6月~9月頃と短く、その間に最大1千コの卵を産む。 全長は3~4cm。羽化の時期は6月~9月頃と短く、その間に最大1千コの卵を産む。

お花見の桜の中には、大量の幼虫が―!?

近年、サクラやモモなどのバラ科樹木が「クビアカツヤカミキリ」に食い荒らされる被害が相次いでいる。カミキリムシの一種であるこの外来種は、輸入木材の中に潜んで流入した可能性が高いというが、経路は特定できていない。

2011年に埼玉県深谷市で初の目撃情報が出て以降、東京都、栃木県、群馬県、愛知県、大阪府、徳島県にも被害が拡大。今年1月には環境省が「特定外来生物」に指定するなど、各自治体が血眼になって発見・駆除に取り組んでいる。

特徴的な真っ赤な前胸部を持ち、いかにも強そうな見た目のクビアカツヤカミキリだが、実はタチが悪いのは幼虫。昆虫の生態や駆除の研究を行なってきた森林総合研究所の浦野忠久研究チーム長が説明する。

「現在、われわれが屋内で観察を続けている個体で、最大1000個前後の卵を産む能力があることが確認されています。環境によって個体差はあるものの、幼虫から成虫になるまでだいたい2年から3年ほど。その間に、サクラやモモの木の中を食い荒らして成長していきます」

われわれがお花見を楽しんでいる間にも、桜の木の中ではたくさんの丸々と太ったクビアカツヤカミキリの幼虫が、不気味にうごめいているかもしれないのだ…。

また、同じ種類の木であっても、樹齢によって食害の出方が異なるという。

「樹木側は幼虫に有害な樹液を出して抵抗しようとしますが、老木の場合はその抵抗力が低い。残念ながら、“名木”などと呼ばれるズッシリとした木に限って実は弱いんです」(浦野氏)

一度食い荒らされてしまった木は再生することが難しく、ジワジワと枯れていくのを見ているしかない。とはいえ、そのまま放っておけばクビアカツヤカミキリの繁殖はさらに広がり、樹木自体にも落枝や倒木の危険性が出てくるため、ためらわずに伐採するしかないという。「このまま被害が拡大すれば、花見ができなくなる日も来るかもしれない」と浦野氏も警鐘を鳴らす。

クビアカツヤカミキリに立ち向かう対策は?

では、クビアカツヤカミキリに立ち向かう各自治体はどんな対策を取っているのか。昨年夏に駆除を目的とするクラウドファンディングで資金調達に成功し、独自の対策に取り組む徳島県立農林水産総合技術支援センターの中野昭雄上席研究員はこう語る。

「オスのフェロモンのにおいにメスが寄ってくることから、そのにおいを人工的に合成した“フェロモントラップ”を仕掛けて産卵前のメスを駆除しています。とはいえ、これはまだ実験段階で、現在最も有効なのは手で捕まえることです。昨夏は、板野町にある48のモモ園にいた約1400匹の成虫を、手で捕獲することに成功しました」

1400匹! 噛(か)みつくことも少ないため、子供でも簡単に捕獲できるそう。

「人間が近づくと、フェロモンとは違う警戒のにおいを出します。これがありえないほどクサいんです。ギイギイ鳴くこともありますし、かわいい特徴なんてひとつもありません」(前出・浦野氏)

全滅は難しいというが、専用殺虫剤など、繁殖を防ぐ対策は着実に強化されてきている。これからもずっと、日本でお花見ができますように!

(写真提供/森林総合研究所)