北海道日本ハムファイターズの本拠地球場が現在の札幌市から、札幌と新千歳(しんちとせ)空港の中間に位置する北広島市に移転することが発表された。2023年をめどに、JR千歳線の北広島駅から1.5kmほど離れた森林を、スタジアムを中心に商業施設やホテル、公園などが一体となったボールパークとして開発。北広島市は千歳線への新駅設置も計画している。
ここ最近、路線や駅の廃止、列車本数の削減など、暗い話題の続くJR北海道にとって久々の明るいニュース。鉄道ファンはさっそく新しい特急列車を妄想するなど、盛り上がりを見せている。
ところが、当のJR北海道の島田修社長は3月末の記者会見で、「新駅を造れば交通アクセスが解決するというわけではない」と消極的なコメント。その後の地元自治体との協議でも「課題はあるが(新駅設置は)不可能ではない」と、なんだか煮え切らない。
JR北海道の事情に詳しい鉄道ライターの杉山淳一氏は、その理由をこう推測する。
「元々、この新駅は“請願駅”として、費用は地元負担で造られる予定です。ヘタに色気を見せると、駅の建設費用を負担させられかねないと警戒しているのでは」
確かに、赤字続きのJR北海道からすれば、懐を痛めずに新駅が造れるならそれに越したことはない。
また、千歳線はJR北海道で最も列車の本数が多い路線。ここに、さらに野球観客輸送用の臨時列車を走らせるのは難しいとの声もある。
「それも結局はお金の問題です。路線を改良することによって、もっと多くの列車を走らせることができる。快速も今は6両編成ですが、乗り切れないなら新たに車両を造って8両にでも9両にでもすればいいんですよ」(杉山氏)
新球場の計画資料によれば、1試合当たりおよそ3万人の観客のうち、1万人が鉄道を利用すると想定している。昨年の札幌ドームでの公式戦試合数58で考えると、約60万人の乗客増。それも札幌だけでなく各地から列車に乗ってやって来るため、かなりの増収になるだろう。
「いっそのこと、JR北海道はボールパーク構想に参加してしまえばいいんですよ。さらなる収益を上げられるだろうし、駅もサービスで造っちゃいましょう!」(杉山氏)
西武や阪神などの鉄道会社は、かつて利用客を増やすために莫大(ばくだい)な予算を投じて野球チームを保有する決断をした。一方、JR北海道はチームを持つことなく“果実”だけを手にすることができるのだ。このチャンスを生かさない手はないはずだが…。
(写真/時事通信社)