福田淳一財務省事務次官のテレビ朝日記者へのセクハラ問題で、同局の宇賀なつみアナは記者の訴えをなかったことにしようとした自社の対応を批判した。
タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。
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財務省の福田淳一事務次官のセクハラ事件は今や世界に知られるところとなりました。麻生太郎財務大臣のありえない対応にも世界中がドン引きです。
海外メディアが、ようやく日本にも#MeTooの波が来たか!?と報じているように、報道機関で働く女性記者たちの置かれたあまりにも過酷な状況が明らかになってきました。
テレビ朝日がセクハラ被害の訴えを取り上げなかったことはけしからんです。財務省ににらまれたくないからなのか、それとも二次被害を避けるためかわかりませんが、記者の訴えをスルーしたのは本当にひどい。でも、社として記者会見したことは評価するべきでしょう。しないよりはずっといいです。
テレビ朝日の宇賀なつみアナは、生放送で自社の対応について批判したそうです。これはとても勇気のいること。
「あいつ、フェミか?」とか「生意気だ」などと疎まれるリスクを冒して、きちんと意見を言ったのは、素晴らしいと思います。これを機にメディア企業は、男尊女卑でハラスメントにも鈍感な体質を改めてほしい。
先日、こんな場面に出くわしました。放送局の記者さんと数人で話していたとき、居合わせた男子学生たちが尋ねました。
「やっぱり、女好きの政治家とか官僚には、女の記者や女子アナをつけるんですか?」
好奇心丸出しの、ニヤニヤ笑い。「女性記者とか女子アナってエロ人員なんでしょ」っていうゲスの勘繰りそのものでした。
こういう物言いは、メディア企業で働く女性をひどく貶(おとし)めています。 女性を政治家や官僚のご機嫌取りのための人身御供(ひとみごくう)みたいに言わないで!
確かに男性ばかりの職場で屈辱的な扱いをされることはあります。女の武器を使ってでもニュースを取ってこいと暗黙のうちに強いられていると知りながらも、そうではなくちゃんと実力で評価されようと、人一倍努力したり実績を積んでいる女性がたくさんいます。
「女だから」「女のくせに」と戦いながら涙をのんで歯を食いしばってきた女性たちが、ようやく声を上げ始めたのです。なのに、なんで「やっぱり女は単なる色仕掛け要員にすぎないよね」って言い方をするんだよ! マスコミ叩きのふりして女を叩くのはやめてくれえ。
ニヤニヤ笑いの人たちは、福田事務次官と同じ発想です。女性記者を記者とも人間とも思わず、ただ性的な存在としてしか見ないのですから。
メディアの体質改善と、霞が関や永田町の体質改善との両方が進まなければ、ハラスメントにNOというのが当たり前の世の中にはなりません。今回の騒動は、これまでの常識を非常識に変えるチャンスなのです。
●小島慶子(こじま・けいこ) タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『絶対☆女子』『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(共に講談社)など。