子供を産めない環境が問題です。

自民党の加藤寛治衆院議員が結婚披露宴で新郎新婦に「子どもは3人以上産んで」などと呼びかけていたことがわかり、物議に。タレントのデヴィ夫人は「普通のこと」とこれを擁護するが...。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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70代の常識は、2018年の非常識なんです。もういいかげん、頭を21世紀仕様にしてくれませんか。それが無理なら、せめて黙っていてほしい。

「結婚披露宴では『必ず新郎新婦、3人以上の子供を産み育てていただきたい』と呼びかける」と発言した自民党の加藤寛治衆議院議員。「いくら努力しても子供に恵まれない人に頑張れというのは酷だから、(産める人は)世のため人のために3人以上産めと20数年言っている」とも。

昨年の山東昭子議員の「4人以上産んだら表彰」発言といい、人を人口増産機扱いする政治家にはドン引きです。そんな人権意識に欠けた発言をする暇があったら、子供を産み育てやすい環境の整備に議員として汗をかいたらどうですか。

で、まあ当然、加藤議員の発言に対しては非難の嵐だったわけですが、そこで加藤議員の発言を「普通のことです」と擁護したのがデヴィ夫人。

ええっ、夫人、それは一体いつの時代の普通? 子供を持つか持たないかは個人が決めることですよ。

男性も女性も国のためにではなく、自分の人生を豊かにするために子供を持つんですよ。その結果として、人口が増えて国が栄えるのです。産まない人のせいで国力が低下するんじゃなくて、産めない環境が問題なんですよ。

国のために産めっていう発想の先には「非常時にあなたの子供を差し出せ」があることを忘れてはいませんか。だってそうでしょう? そう考える政治家にとっては、若者は"お国の資産"ですからね。子供出せよ、になりますよ。そういう過去があったことは忘れちゃいけませんよね。

加藤議員は若い女性に「結婚しなければ子供が生まれない。人様の子供の税金で(運営される)老人ホームに行くことになる」とも説いているのだとか。

おいおい、そんな脅しをかけて歩くのはやめてくれないか。じゃあ何か、結婚しなかった人や子供を持たなかった人は、お国に貢献しなかった報いとして老後は野垂れ死にしろとでも? そして子供を産み育てるということは、老人ホームに入る権利を得るための投資だとでも?

どこまで人の尊厳を軽んじれば気が済むんですか。

安心して老後を迎えることができない世の中を変えるのがあなたたち政治家の仕事じゃないですか。女性に責任を押しつけるのはお門違いですよ。

そんな助言は百害あって一利なし。正論のつもりかもしれないけれど、時代錯誤の呪いの言葉です。

デヴィ夫人に悪気はないのでしょうが、加藤議員の発言は全然"普通"ではないことに、ぜひ気がついていただきたいものです。お説教する相手を何卒お間違いのないように。

●小島慶子(こじま・けいこ) タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『絶対☆女子』『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(共に講談社)など。