羽田空港への着陸便がやって来た。従来の「海から入って海に出る」という飛行ルートが2020年の東京オリンピックまでに大幅に変わる? 羽田空港への着陸便がやって来た。従来の「海から入って海に出る」という飛行ルートが2020年の東京オリンピックまでに大幅に変わる?

増え続ける外国人観光客への対応は待ったなし! 2年後の東京オリンピックまでに空の玄関口、羽田空港の発着回数を増やす計画が進行中だ。

しかし、東京都心を低空飛行する新ルート案に住民は猛反対! 国交省は「丁寧な説明を」というが不安要素は払拭されているのか?

* * *

東京都港区白金在住の杉下共幸さん(68歳)は、閑静な生活環境を求め、一昨年の8月に大阪から引っ越してきた。ところが直後、2020年の東京オリンピックに向けて、自宅の上空450m付近を多いときで2分に1回、飛行機が通過し、羽田空港に着陸する計画があることを知る。

予想される騒音は約70デシベル(dB)。これは会話が1m以内で大声なら成り立つ大きさだという。

ついのすみかと思って購入した戸建て住宅だが、ローンがある以上引っ越せない。

「がっかりしました。でも飛行はまだ『案』なので、すぐに反対運動に参加しました」

杉下さんが入った市民団体「みなとの空を守る会」(以下、守る会)は16年5月に発足。共同代表の増間碌郎さん(70歳)は閑静なこの地で長年暮らしてきたが、「突然降って湧いた計画」に驚いた。

そもそも羽田空港を離着陸する飛行機のルートは、原則として「海から入って海に出る」ことになっていた。

ところが国土交通省は14年7月、増え続ける外国人観光客への対応策として、東京オリンピック開催までに羽田空港は年間3万9千回、成田空港は4万回の増便が可能とする試算を出した。この羽田の増便を実現させるために出てきたのが、これまでとは違う「陸から入って陸に出る」ルート案だ。

羽田空港には、南北に延びるA滑走路とC滑走路、そして東西に延びるB滑走路とD滑走路がある。

従来はBとDが着陸に使われてきたが、新ルート案では南風の吹く好天時の15時から19時の間の3時間に限り、羽田に向かう飛行機は埼玉県から南下して東京上空に入る。

高度は羽田に近づくほどに低くなり、品川区で約300m、大田区で約150mと想定されている。着陸回数はAには1時間当たり14本、Cには30本と想定されていて、1分半に1便以上が都心を低空飛行することになる。

 新ルート案では、羽田に向かう飛行機は南風の吹く15時から19時の間の3時間に限り、埼玉県から南下してAかCの滑走路に着陸する。またBから離陸して川崎コンビナート上空を通過するルートも示されている 新ルート案では、羽田に向かう飛行機は南風の吹く15時から19時の間の3時間に限り、埼玉県から南下してAかCの滑走路に着陸する。またBから離陸して川崎コンビナート上空を通過するルートも示されている

首相案件でも「地元の私たちは理解していません」

一方の離陸は、南風時の同じ時間帯でBから1時間20便が出発し、川崎コンビナート上空を通過して海に抜ける。そして北風好天時には、7時から11時半の4時間半と、加えて15時から19時の間の3時間を使って、Cから1時間当たり23便が江東区や江戸川区の上空を通って北上する。

そうすることで現在1時間当たり最大80回の発着数が90回へと増え、年間で3万9千回増えるという計画だ。

今年1月22日には安倍晋三首相が施政方針演説で「羽田、成田空港の容量を、世界最高水準の100万回に拡大する(現在約75万回)。飛行経路の見直しに向けた騒音対策を進め、地元の理解を得て、2020年までに8万回の発着枠拡大を実現する」と表明した。

これを増間さんは「首相案件ですね」と苦笑いすると、「地元の私たちは理解していません」と語気を強めた。

計画の公開後、国土交通省は「住民に丁寧な説明」をすると述べ、確かに各地で説明会は開催された。だが、それは「オープンハウス型」といって、会場に説明用のパネルを展示し、それを見た住民の質問に係員が個別に説明するスタイル。守る会などの住民が要求している集会型ではない。

「あれでは問題意識の共有はできない」と、守る会では署名活動、チラシ配布、パレードなどで住民への周知活動に努めるが、初めてこの問題を知る住民の多くは一様に「信じられない」と驚く。特に住民がどうしても納得できない問題が「騒音」と「落下物」の2点だ。

◆果たしてテスト飛行は? この続き『週刊プレイボーイ』26号(6月11日発売)「都心を超低空飛行する『羽田新ルート』は大丈夫か!?」では国交省を直撃し、徹底取材。そちらもお読みください。

(取材・文・撮影/樫田秀樹)