活発な火山活動を続けている霧島連山の地下に巨大なマグマだまりがあることが確実になった! そして、もし、そのマグマが超巨大噴火を起こせば、九州どころか日本全土に莫大な被害を及ぼすことになるという。
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3月6日、宮崎・鹿児島県境にある霧島連山の新燃岳(しんもえだけ)が爆発的噴火を起こし、4月5日には火口から約8000mの高さまで噴煙を上げた。
同じく霧島連山の硫黄山(いおうやま)も4月19日に約250年ぶりに噴火。現在もこのふたつの火山は、活発な活動を続けている。
そんななか、気象庁気象研究所・東京大学・京都大学の研究グループが、霧島連山の地下に幅最大約15km、厚さ約5kmにも及ぶマグマだまりがあると発表した。
鹿児島大学の井村隆介(いむら・りゅうすけ)准教授(火山地質学)が解説する。
「幅15km×10km×厚さ5kmだとすると、体積は750立法kmになり、かなり巨大なマグマだまりといえます。
マグマだまりというと、皆さんドロドロした液体だと想像されがちですが、現在の火山学では“マッシュ”といって、粥(かゆ)のような状態だと考えられている。米粒のような固体の部分とその周りに液体が少しある感じです。
液体のマグマはだいたい1%から数%程度でしょう。固体よりも軽く、流動性のある液体のマグマがえびの岳の下に少しずつ移動してきて、ある程度たまると新燃岳から噴出しているのだと思います」
では、その1%のマグマが噴出するとどうなるのか。
「1%だと7.5立法kmになります。これは富士山の宝永噴火の数倍の規模ですが、一気に噴出することはないと思います」(井村氏)
宝永噴火は1707年に起きた富士山の最も新しい噴火で、東京ドーム1300杯分のマグマが噴き出されたという。そして、東京でも数cmの火山灰が積もったといわれている大噴火だ。
今、霧島連山の地下にある1%のマグマの、その数分の1が噴出するだけで、東京ドーム1300杯分になるというのだ。
カルデラ噴火で火砕流が九州を襲う!
■カルデラ噴火で火砕流が九州を襲う!
霧島連山の地下にあるマグマだまりについて、「だいたい私が予想していたのと同じくらいの大きさです」と語るのは、『死都日本』(講談社文庫)を書いた小説家の石黒耀(いしぐろ・あきら)氏だ。
この本は、霧島連山のそばにある加久藤(かくとう)カルデラ地下のマグマが大爆発を起こすと日本はどうなるかが描かれた巨大噴火シミュレーション小説。そして、その正確な分析が専門家から高い評価を得て、石黒氏は日本地質学会から表彰を受けている。
「今、新燃岳で起きている噴火は、巨大なマグマだまりから漏れ出した数滴の滴が起こしているようなものですから、超巨大噴火の心配はないでしょう。ただ、新燃岳は加久藤カルデラの火口縁にあり、その東と西には正断層があります。もし、南海トラフ地震などで断層が左右に開いたときには、圧力が高まっている地下のマグマが大爆発を起こす可能性があります。
また、今回の調査で加久藤カルデラの南東の端にマグマだまりがあることがわかりましたが、私は加久藤カルデラの真ん中まで調査してみると、もっと大きなマグマだまりがあると思っています。
加久藤カルデラは巨大噴火する力がないといわれてきましたが、今回、巨大なマグマだまりが見つかったことで、いつ爆発が起きてもおかしくなくなりました」(石黒氏)
カルデラ噴火は、深部マグマが爆発的噴火を起こし、直径2km以上の凹地ができるほど大きな爆発だ。そのため、一度、カルデラ噴火が起きると、その被害は甚大になる。
「火砕流によってほぼ九州全土に大きな被害が出て、日本はパニックになるでしょう。原子力発電所が火砕流によって爆発すれば国の存亡の危機にもなります」(石黒氏)
九州南部に大きな地震が起こると、火山がカルデラ噴火を起こし、それによって原発が爆発するという最悪の事態も考えられるのだ。
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(取材・文/村上隆保)