タレントや著名人が声を上げれば、瞬く間に数万人、数十万人に声が届く目黒の女児虐待死を受けて、イラストエッセイストの犬山紙子、タレントの眞鍋かをりらが子供たちの虐待に向き合う活動チームを結成したことをそれぞれのSNSなどで発表した。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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「#児童虐待に取り組まない議員を私は支持しません」というハッシュタグが広まっています。イラストエッセイストの犬山紙子さんが目黒区の船戸結愛(ゆあ) ちゃん虐待死事件を受けて立ち上げ、眞鍋かをりさんや坂本美雨さん、福田萌さんらが次々賛同。ネット上で拡散し、賛同する声が増え続けています。

そんななか、埼玉県は、児童相談所が把握した虐待が疑われるすべての事案で警察と情報共有する方針を示しました。児相と警察の情報共有が行なわれるのは高知県、茨城県、愛知県に次いで4県目。まだ大部分の自治体では実施していません。

今 回の事件でも、虐待に周囲が気づき、児相に通報されていたにもかかわらず、子供の命を救うことができませんでした。これまで何度も同様の事件の報道があり ました。私もそのたびに「児相は何をしているのか?」と怒りを感じていたのですが、今回のことで現場の深刻な人手不足や関係機関との連携不足を知りまし た。犬山さんは、とにかくそんな現状を変えたい、今、虐待されている子供を救えるようにしてほしいという強い思いから呼びかけを思い立ったとブログで綴 (つづ)っています。

テレビに出ている人が知名度を生かして世の中を動かそうとすると、必ず売名行為だと叩く人が現れます。でもそんなもの は言わせておけばいい。同じ問題意識を持っていても知名度がないがために声を広げられない人はたくさんいます。タレントや著名人が声を上げれば、瞬く間に 数万人、数十万人に声が届く。それで少しでも世論が高まり、政治家が動いて社会の仕組みが変わるのなら、自分が動こうと思う犬山さんのような人がいるのは 当然でしょう。

そうやって自分の知名度を活用しようと考えるタレントさんが若い世代にももっと増えればいいなあ。多くのチャンスを与えてく れた社会に対して、その知名度を役立てて何かができればと思うのは自然なこと。私も、知人たちと一緒に#WeTooJapanというハラスメントをなくす キャンペーンを立ち上げました。

タレントやアーティストが社会問題について発言したり、政治的なことに関わるのを批判する人もいるけど、不 思議でしょうがない。だって生きていればどうしたって考えるでしょう。これが不便だなあとか、こんなのおかしいよなとか、これっていいよねとか、もっとこ うしてほしいとか。いくらでもあるよね? それこそが政治の原点。私たちの生活に関わることを決めるのが、政治家の仕事。

世の中について意見を言うことを、偏りのある特別なことだと思っている人は、ずいぶんのん気ですね。日常と格闘していれば誰だって政治と無縁じゃいられませんよ。思い立ったら、声を上げていいんです。

●小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『絶対☆女子』『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(共に講談社)など